スタイル転換のキーマンとなる「左利きのCB」

昨季の長崎は26ゴールでJ2得点王に輝いたスペイン人FWフアンマ・デルガドらの活躍もあり、リーグで4番目に多い70得点を奪いながらも、56失点(14位タイ)を喫したことで7位に終わり、6位以内に与えられるJ1昇格プレーオフへの出場権も逃した。

さらに今オフには契約延長を発表したファビオ・カリーレ前監督がブラジルの名門サントスFCの監督就任を一方的に表明。前監督の違約金などについては現在、国際サッカー連盟(FIFA)へ提訴中だ。

国際的な監督交代問題に揺れたが、その後は新たにヘッドコーチとして暫定的に指揮を執っていた下平隆宏氏が新監督に就任。知将のもとでDFラインから攻撃を組み立てる新たなスタイルへの転換が進む。

1試合ごとのパス本数の平均値が昨季の370.1本から今季は468.3本と、約100本増えたチームにあって、第2節のベガルタ仙台戦(H)で105本のパスを記録した田中はそのキーマンとなっている。

――ただ、甲府戦では試合終了間際に田中選手からのパスを奪われて大ピンチを招くこともありました。左サイドに大きく開いてプレーする場面が多いですが、リスクとのバランスはどう考えていますか?

「確かにああいうシーンは減らさないといけません。ただ、CBが開いてサイドの選手を押し上げていくことはチームとして取り組んでいることでもあります。そこは自分がサイドに開いてから相手の間に差し込んでいくパスの質や精度、その時のポジショニングにももっと拘っていきたいと考えています」

第6節の甲府戦ではJ1とJ2の両方で得点王を獲得した元ナイジェリア代表FWピーター・ウタカを相手にも怯まず対応した田中隼人(写真提供:V・ファーレン長崎)

――守備に関してはチームとして、「全38試合で35失点以下」を目標とされています。第5節の愛媛戦(A)では田中選手がシュートブロックを5本も記録するなど、強さが発揮されていますね。

「今はチームとして『クロスを上げさせない』ということに取り組んでいます。実際にクロスを上げられた数も少なくなっていますし、上がって来るクロスに対してもCBを組む新井一耀選手らと上手く声を掛け合えていると思います。

ゴール前へのクロスだけでなく、マイナス方向へのクロスでもCBのどちらかが出ていって跳ね返せるようにできています。今後は相手に打たれるシュートの数も減らしていけるように考えていますが、最後は自分が身体を張って何とか防ぎたいという気持ちが出ているのだと思います」

――ご自身も含めて主に4バックに入る3人が新加入選手で構成されています。連携が積み上がっている段階なのでしょうか?

「キャンプの段階からコミュニケーションも上手くとれていて、今は連携も問題なくやれていると思います。そして、チームとして失点を減らすことを、チームの全選手が強く意識しています。最前線のフアンマ選手も自陣まで戻って守備をしてくれますし、たくさんの選手に助けてもらっているので感謝ですね」

自らボールを運び、長短のパスで攻撃の起点となる現代型CBの視点とは?(写真提供:V・ファーレン長崎)