小林慶行(よしゆき)監督からも「一皮むけた」と称される椿。千葉では加入初年度となった2023年シーズンからリーグ戦24試合2得点1アシストを記録し、昨季は22試合5得点3アシストでキャリアハイをたたき出した。
また今季のドリブル総数は62回(J2第19節終了時点)となっており、既に昨季の51回を上回るなど、自信が数字に表れている。
この調子でいけば、さらなるキャリアハイ更新も可能に見えるが、椿自身は結果にこだわっていない。
9、10時間やっていたゲームをやめてコンディション向上
――無欲に近い状態なのでしょうか。
「いまの俺は欲を捨てていますね。今シーズン初めのインタビューでは『結果を残したい。結果にこだわりたい』と言いましたし、監督にも『結果にこだわれ』と言われましたが、実はぜんぜん結果に焦っていない。逆に結果を出そうと焦ってしまうと、開幕からここまでの自分の良さが消えてしまう気がしています。
『自分がいいプレーをしたい』となるのが嫌ですし、チームのために走っている選手のところにボールがこぼれてくると思っている。だから焦らなくても、いまの自分にはチャンスがくると思っています」
――アタッカーとして欲は捨て切れるものでしょうか。
「もちろんドリブラーなので、ボールが入らなかったり、なかなか良さを出せなかったら、欲は出てくる。自分にもっとボールを集めてほしいと思う場面は試合中にもたくさんあります。それでも根本には“チームのために”という気持ちがあるから、なんとかバランスを保っている感じです」
――その感覚はいままでにないものですか。
「これまでは自分のドリブルを見てほしい気持ちと結果に執着しすぎていた。それでいいのかもしれませんが、いまみたいに守備でもチームのために走れて、なおかつ攻撃ができればもっといい選手になれると思いますし、選手としての幅が広がってきていると思います」
――欲という意味では、大好きだったゲームをやめたと聞きました。
「超絶ゲーマーだった俺からしたらすごいことなんですよ。休みの日とかは9、10時間やっていたゲームを開幕前のある一日でやめました。『この時間って無駄だな』と突然思い始めて、奥さんに『俺、もうゲームやめるわ』と伝えました。
そこから本当に身体のコンディションがいいんです。だからチーム内のゲームをやっている人に『やめな』と言っていますが、信じてもらえません(笑)」
――これまでは結果を重要視しすぎていたのでしょうか。
「いろいろな人に『あとは結果だけ』『椿は結果を残せば、もう一つ上のレベルに行ける』と言われてきました。だから自分でも『結果が必要なんだ』と思い続けていました。でも、本当はそこじゃなかったのかもしれないなって…」
――どのような部分が成長のために必要だったのでしょうか。
「結果を残すために、自分のマインドをどうするかという点だと思います。実際、今年は結果に焦っていなくても、結果が付いてきている。もちろんまだまだ足りませんが、焦っても仕方がない。チームのために走った選手に、結果は付いてくると思いますし、それが今年のマインドの変化です」