飲酒運転による全北現代退団の真相

邦本は2021シーズンに、全北の5連覇目となるリーグ制覇に貢献すると、翌年も同クラブでのプレーを続行。2022シーズンは、リーグ戦14試合4得点1アシストを記録し、週間ベストイレブンに3度選ばれるなど『無双』と呼べる活躍を見せていた。

その矢先、同年7月8日未明に、邦本が全羅北道全州(チョルラプクド・チョンジュ)市内で、飲酒した状態で車で帰宅する途中に地元警察に摘発されたというニュースが流れた。

さらに13日には、韓国の大手自動車企業『現代(ヒョンデ)自動車』を親会社に持つ全北が同選手との契約解除を発表した。

優勝争い真っ只中、主力選手の不祥事による退団は、チームを震撼させた。

攻撃の軸をシーズン途中に失った全北は、ライバルの蔚山現代にリーグ王者の座を明け渡すことになった。

「本当に申し訳ない気持ちでいっぱい」と唇をかみ締めた邦本に事案の真相をうかがった。

ーー2022年7月に邦本選手は飲酒運転で摘発されて、結果的にチームと契約を解除して退団しました。この事案の真相を教えてください。

「いろいろストレスもあり、そのときはお酒を飲んでいました。練習場の寮の近くまで代行(運転サービス)で戻りましたが、クラブのルールで、代行(の運転)では寮に入ることができませんでした。そこの門に入る手前に警備員がいて、その人が監督に伝えるんです。そういうのもあって、近くの場所に(車を)止めて少し動かしたところを(警察官から)『ちょっと話いい?』みたいな感じで言われました。捕まったというか『交番に行った』みたいな感じです」

2022シーズン、邦本はACLにも出場し、J1横浜F・マリノスとも対戦した(Getty Images)

ーー「逮捕」ではなく「注意」だったということですか。

「そうですね。『気を付けて』みたいな感じだったんですけど、一応クラブには報告しないといけなくて。もし(報告を)しないで、他の人が見て、後々(報道として)出てしまったほうが問題ですからね。警察側がクラブに連絡をして、クラブの人が警察署まで迎えに来てくれて一緒に帰りました。報道では『逮捕された』と書かれていますけど、逮捕ではありません。

契約解除というのも、飲酒運転をしたことは問題ですが、自分がいた全北は大手スポンサーが車の会社(現代自動車)で、イメージダウンになるということで、お互いに話し合って同意のもと契約解除になりました。ネットや記事に出ている『飲酒運転で逮捕になったからクビになった』というのは間違っていて、いま言ったことが事実です」

ーー全北を退団するとき、クラブ公式で邦本選手のコメントはリリースされませんでした。改めて、当時応援してくれていたファンにメッセージをお願いします。

「まず自分のしてしまったことで、期待を裏切ってしまったことに関して本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。それでも、いまでもまだ全北のファンの人たちの中で応援してくれている人がたくさんいて、それがすごくうれしいです。自分がそれ(ファンから受けた期待)をどうやって返せるかというと、自分の日ごろの生活もそうですが、ピッチの上で活躍している姿を見せることで、裏切ってしまった期待を取り戻せると思っています。まだ(期待を)取り戻せてはいませんが、応援してくれている全北のファンの人たちにもっと喜んでもらえるように頑張りたいと思います」

事実を誇張した報道により、邦本の世間からの印象はさらに悪化してしまった。

次項では『悪童』と呼ばれるようになった要因でもある浦和レッズユースとJ1アビスパ福岡(当時J2)を退団した経緯について伺った。