臨機応変な指揮官の手腕が光る
冒頭で触れた通り、開幕5試合で4勝とスタートダッシュに成功した神戸。その立役者となっているのが、自身3度目の指揮を執る吉田孝行監督だ。
残留争いに巻き込まれた昨季は、苦境を脱するべく6月下旬に監督に就任。「J1残留」という最大の目標に向けて堅守速攻を基本戦術に設定すると、一体感が生まれたチームは息を吹き返す。終盤戦はリーグ戦5連勝を記録するなど一気に巻き返し、最終的に13位でフィニッシュ。J1残留というミッションを無事クリアしたのだった。
いわば”応急処置”だった昨季の4か月を経て迎えた今シーズンは、ハードワークをベースとし、攻守にアグレッシブに戦うスタイルをアップデート。開幕5試合で失点は2(リーグ2位の数字)と堅守が光り、「いい守備からいい攻撃へ」を体現する戦いぶりを披露している。
生命線である前線からのプレスがとりわけ機能したのが、直近の第5節・サガン鳥栖戦だ。ゴールキーパーを含む最終ラインからのビルドアップを徹底する相手に対し、1トップの大迫勇也とトップ下の井出遥也がパスコースを切りながら積極的なプレスで圧力をかけていく。両サイドハーフも連動した守備は狙い通りで、ホームチームをシュート1本と完璧に封じ込んだ。スコアこそ1-0だったが、完勝と言っていい内容だった。
指揮官は基本布陣を4-2-3-1(攻撃時は中盤が逆三角形の4-3-3へと変化)に設定しながらも、アビスパ福岡との開幕戦では1点リードの終盤に5-4-1へ移行し、第2節の北海道コンサドーレ札幌戦は大迫と武藤嘉紀が2トップを組んだ4-4-2でスタートするなど複数のフォーメーションを使い分ける。けが人など自チームの状況と戦況、そして対戦相手の特徴を見極めて臨機応変に戦う手腕は素晴らしい。