戦術を支えるキーマンたち
吉田孝行監督が標榜する攻守一体のスタイルを最前線でけん引するのが、国内屈指のストライカーである大迫勇也だ。昨季はけがに苦しみ、思うようにプレー時間を伸ばせず。チームトップとなるリーグ戦7得点を挙げたが、結果的にカタールワールドカップのメンバーから漏れた。
苦しんだ1年を経た今季は、開幕からコンディションの良さを感じさせるパフォーマンスを随所に見せている。
特に最大の武器であるポストプレーの質はやはり圧倒的だ。相手ディフェンダーの厳しい寄せに屈しないフィジカルの強さはもちろんだが、注目は競り合うタイミング。DFとボールの間に素早く身体を入れることで優位に立ち、全身を巧みに使った熟練の技で文字通りマイボールにして、味方につなげる。
指揮官が求める前線からの守備に関しても、「コースの切り方、消し方が本当にうまいし、加えて強度も高い」(齊藤未月)とチームメイトが絶賛する通りだ。ゴールの有無を問わず、ピッチにいるだけで心強い選手である。
中盤で欠かせないのが、新加入ながらすぐにフィットした齊藤未月だ。持ち味とする豊富な運動量で広範囲をカバーし、攻守に気の利いたプレーで潤滑油となる。本職であるボランチのほかに、トップ下やアンカー(攻撃時)、左サイドハーフ(後半途中から)など複数ポジションで機能するサッカーIQの高さも魅力だ。
特にトップ下で起用された際の精力的なプレスは、守備陣からすれば相当助かるだろう。大迫の働きを讃えている齊藤だが、自身の動きも相当に冴えている。ボール保持者の選択肢を狭めるアプローチは実に効果的で、トップ下に配する指揮官の思いが汲み取れる。
3月下旬に国際親善試合を戦った日本代表には招集されなかったが、説得力のあるプレーが続けばそう遠くない未来に声がかかっても不思議はない。
最終ラインに目を移すと、酒井高徳と初瀬亮の両サイドバックが躍動している。左右どちらもこなせる酒井は今季ここまで、右サイドでのプレーに専念。指揮官がシンプルに前へ仕掛けていく戦術を採用していることもあり、ペナルティエリア内に侵入する機会が増加している。2ゴールを決めた第3節・ガンバ大阪戦では、思い切りのいいシュートで快勝に貢献した。
左サイドの初瀬は、ストロングポイントの正確なクロスで攻撃に彩りを添える。その左足はプレースキックでも発揮され、大胆なサイドチェンジでアクセントにもなる。さらにロングスローによるチャンスメイクもあり、崩しの局面でのアイデアは尽きない。
フィジカルの強さを生かした推進力が強みの酒井が「剛」なら、多彩なキックと技巧で決定機を生み出す初瀬は「柔」といったところか。左右のコントラストも要チェックだ。