「現在市役所がある場所は海抜が低く、津波などに襲われたら被害を受ける可能性が決して小さくない。その点、いち早く移転しなければならないんですが、移転費用を含めた財源として、商業施設と一体型の市役所にするアイデアがあり、スポーツ施設と一緒にするというアイディアもある。だから、スタジアムは面白いかもしれないと。
そこで、シンガポールの僕の家の近所にすでにある、サッカー場を中心とした多機能複合型施設『アワー・タンピネス・ハブ(Our Tampines Hub)』の動画を彼女に見せたら、ものすごく興味を持ってくれまして」
「おそらく、市長にも見せてくれたんですね。それが影響したかどうかの真実は僕も知らないのですが、そののちにこれが発表されました(笑)」
鎌倉市長の松尾崇氏は2017年11月、市長選で3度目の当選を果たした。
その際、「災害に強いまちを目指す」として深沢への市役所移転を訴えており、資料の中には『深沢にスタジアムを。』の文字とともに、前述のタンピネス・ハブの動画リンクが民間企業連携によるスタジアム一体型施設のイメージとして付けられていたのだった。
※松尾崇(まつおたかし)鎌倉市長の公式ウェブサイト、政策集『市庁舎移転を深沢に』より
しかし、この時点ではまだ鎌倉インテルは存在していない。あったのは、クラウドソーシングで世界中のデザイナーに依頼して製作されたエンブレムだけだ。
100を超えるデザインアイデアが世界中から寄せられたという。大仏FC、鶴岡八幡宮FC、鳥居FCと呼べそうな安易なデザインのものが9割9分を占めるなか、唯一違う切り口だったのがこの扇をモチーフにしたデザイン。
三方を山に囲まれた鎌倉にある七つの切通し「鎌倉七口」を扇子の骨に見立て、世界中から七つの切通しを通って、人がサッカーボール(=鎌倉)に集まり、そこで新たな付加価値を作って、今度は逆にその切通しから世界に羽ばたく姿がイメージされている。
クラウドソーシングのサービスを使って、見ず知らずのカナダ人デザイナーが創ってくれたこのエンブレムイメージが、鎌倉インテルのスタートだった。