“ブラジルらしさ”が日本を苦しめる
まずはブラジルを苦手とする原因について論じていきたい。
日本人は真面目な民族と言われる。だからこそ、変則的なものに弱いと言われ続けてきた。おそらくサッカーでもそうなのだろう。
ブラジルは伝統的に「アナーキー」(無秩序)であることを武器にして戦ってきたチームだ。世界中の強豪を苦しめ続けてきたその異質を目の当たりにした時、日本にはひときわ激しい混乱がもたらされるのだ。
ブラジルには、欧州と違って“左右のバランス”を整えようという発想がない。むしろ左右で違いを作ることで、相手を惑わせる方策を取っていると言える。
通常、欧州では「中央で創って中央で決める、サイドは中央で決めるための補佐」という考えの下、組み立てと崩しがデザインされている。
しかし、ブラジルは基本的にサイドで創る。中盤を見れば分かるだろう。「ボランチの司令塔」が存在しないのだ。
司令塔は攻撃的MFか、最近ではサイドバックが担っている。欧州でこれに一番近いのが司令塔化する右サイドバックのダニエウ・アウヴェスと、ネイマールを擁するパリ・サンジェルマン(PSG)だが、それでも中盤はパサーが揃っているので、完全に組み立てがサイドに寄っているわけではない。