夜も眠れなかった3カ月間

スアレスのキャリアには空白の3カ月間がある。それは昨季のJ2徳島ヴォルティス退団後だ。

「もちろん徳島には残りたかった。自分にとって特別な場所です」と日本で初めてプレーしたクラブへの愛は大きかったが、3シーズン目となった昨季をもって契約満了。

「サッカー界ではよく起きることだと思います。ただ、なかなか徳島の方から契約更新の話がなかったことは少し残念でした」と別れを告げた。

シーズン終了後は故郷のスペインに戻り、オファーを待ち続けた。

新天地が決まるまでの間、自身が幼いころに所属していたチームから練習参加の誘いを受けたが、ケガのリスクを管理するために一人でトレーニングに励んだ。サイクリングやランニング、ジムで体を動かしてコンディション維持に努める日々だったという。

シュートストップの準備をするスアレス(写真 浅野凜太郎)

「フリーだったので、すぐにどこかのチームに行ける準備をしていましたが、自分とってすごく苦しい期間でした。本当に夜も眠れないくらい毎日不安に襲われていました」と苦しい過去を明かした。

それでも、自分を信じてやり続けた。そんなときに千葉からのオファーが舞い込んだ。きっかけはGK若原智哉の全治約5カ月にも及ぶ長期離脱だ。

若原をはじめ、GK陣には鈴木椋大(りょうた)、薄井覇斗(はると)、岡本享也(みちや、J3テゲバジャーロ宮崎へ期限付き移籍中)を擁していた千葉だったが、今季加入の若原が1月16日に右ひざ外側半月板を損傷。スペインで無所属期間を送っていたスアレスに白羽の矢が立った。

見事な横っ飛びセーブをするスアレス(写真 浅野凜太郎)

「ジェフ以外のクラブから正式なオファーはありませんでしたが、自分は日本が大好きですし、日本でずっとプレーをしたいという気持ちがありました。だから他のクラブからオファーがこなくて良かったと思っています(笑)。

オファーをいただいた経緯として、彼(若原)がケガをしてしまったから(千葉に)来たという見方もできますが、自分はすべてのことに意味があると思っています。だからここに来たからには、全力でチームのために尽くしたい」と二度目の日本挑戦を決意した。

千葉への加入は今年2月6日に発表され、J2第3節の山形戦(3○2)でデビューを果たした。「無所属期間中にしっかりと体を動かしていたので、短期間でなんとかみんなと同じレベルに持っていけた」と、3カ月間のブランクを感じさせないプレーで千葉の勝利に貢献した守護神は、ここから正ゴールキーパーとしての地位を確立していった。