ロシアで秋春制への移行が叫ばれ出したのは、2005年頃。

UEFAカップで優勝したCSKAモスクワのヴァレリー・ガザエフ監督が、国内リーグのカレンダーを欧州主要リーグに合わせれば、ロシアのクラブは大きな成功を収められずはずだと発言。それで機運が高まると、2010年にロシアサッカー連合の委員会の多数決で移行が決まった。

当時、唯一の反対票を投じたのは、下部リーグの会長。下部リーグの意見が加味されていないと批判しつつ、下部には気候条件の厳しい都市のチームも多いため、移行による観客数の激減を不安視していた。

また、トミ・トムスク(2022年に解体)の監督もこう危惧していた。

「なぜ良いピッチと好天に恵まれた夏にもっと頻繁に試合をしないのか?観戦する条件が良くなれば観客動員数は増えるはずであり、それはクラブの利益にもつながる。たしかに夏には多くの人が別荘にいるが、それでも凍えるような天気よりは多くの人がスタンドに足を運ぶだろう。さらに、我々のリーグがまだ注目されていることを忘れてはならない。雪の中で試合を見てロシアに行きたいと思う強い外国人がいるだろうか?」

サポーターの観戦環境の問題は、スタジアムの屋根設置で解決されるはずだった。

2010年12月にロシアは、2018年FIFAワールドカップの開催権を獲得。それに向けて近代的なスタジアムを建設する予定だった。

だが、2018年W杯が開催され、現在もロシア1部リーグの試合が行っているのは、サンクトペテルブルクのガスプロム・アリーナだけだそう。その建設には日本円で800億円もの予算が市から投入された。

また、ロシアのスタジアムでは、観客が退出する際に冷たい外気に晒されることなく温かい室内にいられるような設計になっていないところもあるという。

さらに、2010年時点では多くのドーム型スタジアムもできるとされていたが、2023年現在でドーム型スタジアムでプレーする1部クラブはひとつもない。2部でも1チームだけだそう。