ロシアW杯で見た“世界”の第一線

育成年代の頃から年代別日本代表のエースとして活躍してきた宇佐美。

2009年には『FIFA U-17W杯』でブラジルのネイマールやフィリペ・コウチーニョ、スイスのグラニト・ジャカらとも対戦。そして、19歳にしてドイツの絶対王者バイエルンへ移籍するなど、10代から代表でもクラブでも世界の第一線を経験してきた。

そして、26歳となった宇佐美は『FIFAワールドカップ2018ロシア』に出場。サッカー選手なら誰もが憧れる檜舞台に立った。

しかし、本大会開幕の2カ月前、アジア予選突破を決めたヴァヒド・ハリルホジッチ監督が電撃解任。後任には技術委員長を務めていた西野朗氏が就任するという物議を醸す人事が発表された。

宇佐美にとってハリル氏は自身を代表デビューに導いた恩師であり、西野氏もまたG大阪でプロデビューを飾った当時の指揮官だった。

「複雑でしたよ。僕らも何が起きているのか、全く分かっていませんでしたから。

西野さんは当時の技術委員長でしたから、代表の遠征に招集されるたびに顔を合わせていましたけど、まさか監督と選手の関係になるとは思いませんでした。僕はその流れに付いていくのに必死でしたね」

本大会ではベスト16に進出する日本代表チームにあって、「11番」を着た宇佐美は第2戦のセネガル戦(△2-2)で途中出場してW杯デビュー。第3戦のポーランド戦では先発出場するも65分で交代している。

ピッチを退いて約10分後には0-1で負けている状況ながら、日本はフェアプレーポイントで決勝トーナメント進出に勝ち上がれる状況を察知し、攻撃に出ずに後方でパスを回し続ける大胆な戦略に打って出た。

G大阪時代は超攻撃的なサッカーで鳴らした指揮官の選択に感慨深い想いもあった。

「ポーランド戦に関しては決勝Tに勝ち上がる術があるならば、あの選択で良かったと思います。もし攻撃に転じて失点して、結果的にグループステージ敗退となると、そういう人たちはそこに対して批判すると思いますし、何か言うキッカケを探しているだけだと思うので。

自分たちで『決勝Tに行けた』という想いを共有できていましたし、それを強調して、『メディアの声など気にしなくて良い』と言ってくれる先輩もいました。チームとして一丸となってやれたと思います」

ラウンド16のベルギー戦では日本が2点を先行する展開から、2-3と大逆転負けを喫することになったが、ベンチで切り札として準備していた宇佐美の心境とは?

「ベルギー戦に関しては、大会を通してガチっと固まった最強メンバーで、出るべき選手が全員出たと思います。もちろん、僕もベンチから見ていて自分が入っていく準備もしていましたけど、目まぐるしく変わる戦況を見ながら、『どういうプレーを選択したら良いのか?難しいだろうな』と感じていました。

相手の監督(現ポルトガル代表監督ロベルト・マルティネス)も決断が速く、マルアン・フェライニやナセル・シャドリといった長身の選手を次々に投入してきて、日本のDFラインで最も身長の低い長友(佑都)さんのところで勝負させる。相手の僕らから見ても狙いが明確でしたし、嫌な策を打ってくるなと思いました。

ベルギーもカウンターが凄く鋭いチームですし、しかも2-1になってからは完全に流れもベルギーでした。西野さんが1度ガチっと守備を固めるのか?追加点を取りにいくのか?すごく考えている表情をされていたので、サブメンバーの僕らも難しかったですけど、西野さんが1番難しい選択を迫られていたと思います。何とかチカラになりたかったです」