宇佐美のポテンシャルを最大限発揮できるポジションは?

弾道が鋭く球筋の速いミドルシュート、ワンステップで局面を劇的に変えるサイドチェンジやクロス、アンドレス・イニエスタのような内股の素早いターン、緩急自在で多彩なフェイントも兼ね備えるドリブルなど、宇佐美のプレーからは「柔」も「剛」も感じさせられる。

2トップの一角、1トップ、トップ下、ウイング、サイドMF、インサイドMF…。本人も「右サイドでも左サイドでも変わらない」と言うように、その都度、起用されるポジションに適応してきた。しかし、その溢れんばかりの才能を活かす最適解は見つかっていない。

そんな宇佐美にとって、ヒントになりそうな元同僚が2人いる。

1人は2011-2012シーズンに過ごしたバイエルン・ミュンヘン時代のオーストリア代表MFダビド・アラバ(現レアル・マドリー)。シーズン当初はオランダ代表アリエン・ロッベンとフランス代表フランク・リベリーが担う両ウイングのポジションを宇佐美と争っていた。

「彼とは同い年なので、コミュニケーションをよくとっていました。リベリーとも仲が良く、彼はまだレギュラーではない時期からチームの誰からも可愛がられている存在でした」

シーズン後半戦に入ると、アラバは左サイドバックにコンバートされて定位置を掴み、UEFAチャンピオンズリーグ決勝に進出するチームで日増しに成長を遂げていった。

「当時からフィジカル的にも優れていて、左利きでいろんなポジションをこなせる器用な選手でした。今は左SBやセンターバック、ボランチなど、FW以外なら全部やっていますよね。

左SBへのコンバートも『彼ならやれるだろう』という感覚は僕だけでなく、当時のバイエルンの選手やコーチングスタッフ全員がもっていたと思います。さすがにCBをやっているのは驚きですけどね」

その後のアラバは当代屈指の名将ジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)の指揮下で試合中にSBとインサイドMF、あるいはCBとインサイドMFを戦術的に行き来する「偽SB」や「偽インテリオール」のタスクを与えられ、ワールドクラスな多機能型プレーヤーへと成熟。

全員攻撃・全員守備が当たり前で、ポジションレスとなった現代サッカー。その模範的選手として、彼の右に出る者はいない。