大都市のクラブと比較して、財政面およびタレント力で劣る(ことが多い)地方クラブが勝ち抜くには、やはり創意工夫が必要となる。ここで極めて重要になるのが、「スタイルの徹底」だ。

志向するスタイルをブレずに貫くことで“立ち返る場所”ができ、選手たちは迷わずプレーできる。貫くのが例えば「堅守速攻」「ポゼッション」「ハイライン・ハイプレス」のいずれであれ、戦術が隅々まで浸透していれば、選手たちは自らのタスクに集中できるのだ。

指揮官が選手たちを迷わずプレーさせて、持っている力を120%引き出すことが、地方クラブの生命線となる。

「スタイルの徹底」は更に、対戦相手に対策を取らせるよう仕向けて、相手チームのエネルギーを削ぐことにもつながる。特に黒田剛監督率いるFC町田ゼルビアは、秋田の徹底したロングボールに対抗するため、敢えて3バックで試合に臨んでいる。

相手に対策を取らせたうえで、自分たちの120%の力をぶつければ、上位クラブから勝ち点を奪える可能性は高まるだろう。実際、第8節の町田戦は秋田がアウェイで1-0の勝利を収め、町田に今季初黒星をつけている。

また、スタイルを明確にすることは、スカウティングを容易にする。J2に在籍する地方クラブの多くが直面するのは、J1クラブまたはJ2上位クラブによる選手の引き抜きだ。これは非常に名誉なことであり、財政面でもプラスだが、戦力的にはマイナスとなる。

移籍した選手の穴埋め、または純粋に戦力アップの補強をするにあたり、志向するスタイルが明確であれば、獲得する選手の具体的なイメージを描きやすい。

例えば秋田の場合、以下のようになる。(順不同)

①献身的に働ける長身FW(ロングボール&クロスのターゲット/守備でも貢献)
②ロングスロワー(崩しの根幹)
③プレースキッカー(崩しの根幹)
④ダイナモ型ボランチ(セカンドボール回収/圧倒的運動量で攻守をつなぐ)
⑤キック力に長けるゴールキーパー(ロングボールの出し手)

このうち、③は昨冬にAC長野パルセイロから獲得した水谷拓磨が見事にハマった。