「選手としての新たな目標」WEリーグの存在価値

――男子ですと当時から国際大会は「見本市」のような…これをきっかけにステップアップするということがありましたが、女子ではどのようなモチベーションが大きかったんですか?

そうですね、女子の場合はワールドカップよりもオリンピックに大きく重点を置いていましたね。

なぜかといえば、日本の女子のサッカーを知らない人々にも届く機会ですから。放送も全然違いましたし、目に触れる回数が多い。そこで活躍することで知ってもらうことができる。認知を上げるという意味で、私たちには価値が高かったんです。

今ワールドカップの後で盛り返してはいますけど、なでしこジャパンはまだまだ認知されていないところもあります。競技人口も増えていますが、チームの数も増やさなければなりませんし、それを継続する必要があります。

プロになりたいという子供たちも、女子のトップチームやWEリーグをそこまで知らないんです。男子と比べるわけではないんですが、まだまだ認知されていない。そのような違いがありますね。

――今後の女子サッカーについての展望として、WEリーグができたことでどんな影響がありますか?

ワールドカップとアジア大会の後ということもあり、大きな話題を集めたWEリーグカップ決勝。サンフレッチェ広島レジーナが初優勝した

いろいろな選手の発掘に繋がると思うんです。今までであれば、なでしこリーグがトップで、その先が日本代表でした。そこに一つの階段が加わりました。

アマチュアの地域リーグがあり、なでしこリーグがあり、そしてプロのWEリーグがあって、さらに海外がある。選択肢が増えたことで、選手の立場なら「上を目指そう」としますよね。

また、なでしこリーグが最も上のカテゴリだったら、日本代表に入るのは難しいという選手は諦めがちなところもあるんです。なでしこジャパンは想像以上に狭き門ですし、実力だけではなくいろいろな要素も必要になります。

WEリーグがあることによって、それは代表や海外と同じように挑戦できる目標になる。だから選手もモチベーションが上がって、パフォーマンスがアップして、さらに魅力あるサッカーができる。環境としては良いのかなと思います。

――何億円ものお金が動かない分、むしろ男子よりも海外リーグへの挑戦が身近ですよね。

そうなんです。大学卒業後に海外に行く選手もいますし、本当にみんな身近に感じていて、アルゼンチンに挑戦している子もいるんです。

2011年のワールドカップで日本代表は世界的にも評価されました。しかもその対象は代表チームだけではないですし、世界の様々な国のスカウトが日本人の力を認めてくれているんです。

実は、アメリカの大学の女子リーグでも「日本人選手が必要だ」という話を聞くほどなんです。2011年をきっかけに、日本は海外の良さを、海外は日本の良さを吸収しようとしていますね。

日本も戦い方や戦術という点、そしてスペシャルな選手を育成する点などを取り入れて強化していくことで更にレベルアップしていくと思います。