世界王者アルゼンチンと比較!「再現性」は代表戦に必要なし
優勝したアルゼンチンのリオネル・スカロー二監督はGS第2戦のメキシコ戦で先発5人の入れ替えを敢行したが、これは初戦でFIFAランク51位だったサウジアラビア代表に敗れた結果を受けて採った策で、ターンオーバーではない。
第3戦のポーランド代表戦で、大会4得点を挙げることになるFWフリアン・アルバレスと、若き攻守の要MFエンソ・フェルナンデスを初先発に抜擢するなど、GSを通してチームの最適解を模索しながら戦っていたのだ。
つまり、今大会のアルゼンチンの優勝とスカロー二監督の采配にこれといった継続性はない。そもそもスカロー二監督は2018年の8月に「暫定監督」に就任して以降、1年3カ月もの長期間に渡って「暫定」の肩書がとれず、アルゼンチン協会が当初から指揮を任せたかった人物ではなかった。
しかし、期待されていなかった“もうひとりのリオネル”は2021年夏にコパ・アメリカを制し、母国を28年ぶりの南米王者へ導くなど36戦無敗を記録。2006年のドイツW杯でチームメイトだったメッシからの信頼も獲得し、カタールW杯を制して36年ぶりの世界制覇を実現したのだ。
日本で森保監督を批判する大きな要因のひとつに、「再現性がない」との指摘がある。カタールW杯本大会に、これまでの4年以上の在任期間でほとんど採用して来なかった3バックで臨んだのは、「戦術的な積み上げがなく、毎回試合ごとにリセットされている」と批判を受けても仕方がない。
しかし、ドイツを撃破してもそう批評されたサッカーは1週間後、スペイン相手に“再現”された。森保監督は再現すべきゲームモデルは設定しなかったが、招集した選手個々にプレー原則とその優先順位だけは示し続けていた。それが選手層の拡充と交代枠5人制を最大限活かせるメリットに繋がったのは事実だ。
これまでは急なシステム変更に対応できなかったが、それが可能となったのは選手間や監督との信頼関係の構築こそが4年間の大きな積み上げとなって現れたと見るべきだろう。
そもそも代表戦に「再現性」は求める必要がない。年間通して集まる機会が5、6回で期間も短く、メンバーも少しずつ変わっている。
何よりもW杯では、欧州や南米、アフリカ、中南米など試合ごとに人種が全く異なるチームと対戦する。特に今大会のスペイン戦では局面の1対1でのデュエルで日本が上回っていたが、それをカメルーン代表などアフリカ勢と対戦した場合にも再現する戦略を立てれば、逆に指導力を疑うべきだ。