イングランドで感じたこと

――川口さんがプレーしたイングランド、デンマークは、ロシアワールドカップでもジョーダン・ピックフォードやカスパー・シュマイケルといった名手の活躍が光りました。ゴールキーパーにとってはどんな環境でしたか?

イングランドはやはりキーパーに対する要求が高いですし、「サッカーの母国」という自負も感じました。僕がいた時はまだ、セーブすること=良いキーパーで、もちろんそれは大事なことですが、僕が日本で意識していた攻撃のフィードだったり攻撃的なプレースタイルというのは特に2部のチャンピオンシップではそこまで評価されませんでした。

ただ、今のプレミアリーグは海外の指導者がどんどん来ているので、偉そうなことは言えないですが保守的なイングランドにおいてもキーパーに対する評価や要求が世界基準になってきているのかなと感じます。

下部のリーグに行くほど自分たちのサッカーにプライドを持っていました。でも、だからこそ「その国のスタイル」があるとも思います。どちらが良いとか悪いではなく、古き良きイングランドのスタイルがあって、そこにモダンなスタイルが入ってきて、より強くなるんじゃないかなと当時から思っていました。

この前のワールドカップでイングランド代表チームがそれを証明してくれましたし、若い選手たちも伸びてきている。世界の流れに応じたサッカーのスタイルの追求ももちろん大事なんですが、自分たちのスタイル、古き良きスタイルに絶対的な自信を持つことも大事だと僕は思います。

――今回のワールドカップはそれを再認識させてくれた大会であったと言えそうですね。川口選手がプロキャリアを振り返って、もっとも印象に残っている試合は何ですか?

たくさんあるので、1試合というのはなかなか難しいですね。日本代表に限定するのであれば、一般的にはアトランタ五輪のブラジル戦、2000年のアジアカップ決勝、そして2004年のアジアカップを挙げているんですけど。

ただ、自分が世界へ出ていくきっかけになったゲームは、アトランタ五輪予選の準決勝サウジアラビア戦。マレーシアのシャー・アラム・スタジアムで行われた試合です。あの試合があったからこそ自分が世界に目を向けることができたのでやはり印象深いです。