パスサッカーを支えるバニーズ流DF

そして、たとえ“格上”が相手でもパスサッカーを貫くバニーズには、4バックに高い技術を持つ“繋げるDF”が揃っている。それも、最前線でFWが抜け出している際には4人全員がシンプルにそれを突くロングフィードを蹴れる。

想像して欲しい。ロングフィードを蹴る際、センターバックの石井や山本裕美、右サイドバックの草野詩帆、左サイドバックの酒井望らは遠くの3トップを見ながらボールを運ぶ。そして、その遠くを見ながら間接視野(顔を上げながらピントとは違う視野の左下や右下に映る)に入って来る味方へショートパスを繋ぐ。

「遠くを見るから近くも見える」が、「近くを見ていても遠くは見えない」からだ。

その上で千本監督(上記写真)は話す。

「ウチはチーム全体で相手陣内に押し込んだ際には、MF3人を全員攻撃に専念させたいという考えがあります。ただ、それだとセンターバックの前を誰がカバーするのか?という問題が出てきます。

そんな時にはボールサイドと反対のサイドバックに中央へ絞るようにポジショニングをしています。そこは男子と違ってキック力に限界があるので、カウンターを食らっても1発では行かれないだろう」

「ゲームメイク能力も必要で、極論すればサイドバックとボランチは一緒かもしれません」というのが“バニーズ流” だ。

そして、“バニーズ流のセンターバック”とは?それはボールの持ち運びにある。

緻密にスペースやマークのズレを見ながら「良い状況をパスの受け手に提供していくサッカー」が理想で、「1つずつマークを剥がしていく作業をやり続けていく中で、1つ隣へのショートパスだけでは読まれるので、それを裏返すためのロングフィードを蹴れるのも条件になる」という。

「サッカーは寸足らずの毛布だ」とは、1950年~1960年代にブラジル代表で活躍した司令塔ジジの言葉だ。

頭から毛布を被れば足が出るし、足先を暖めても上半身が寒くなる。攻撃も守備も完璧にしたいけれど、どちらかに軸足を置かないといけない、という喩えである。細かく言えば「どこで数的有利を作るか?どこで数的同数や不利を許容するのか?」とも言える。

バニーズで数的同数をOKにしてくれる存在は、石井咲希なのだろう。

彼女のスピードがあってこそ、バニーズは攻撃的なパスサッカーを選択できる。サッカーでは「優秀なFWがいるから攻撃的なチームを作る」ではなく、むしろ逆。個人能力の高い選手がいることで、そこに数的同数や数的不利を任せられる考えの方が圧倒的に多い。その方が合理的だからだ。

リーグ戦再開へ向けて、千本監督は言う。

「もちろん、全部勝ちたいです!楽に勝てる相手などいないですし、今日(ハリマ相手に0-2の敗戦) のように試合全体を通して概ね上手く主導権を握っても、大事なところで失点して負けてしまうこともあるかもしれません。

でも、それでブレるつもりもないですし、今のサッカーを続けながらどうやって結果を出していくのか?を積み上げるだけです。そういう意味では相手が格上ばかりで強いのは良いことだと思います。苦労して強くなっていく過程を、少しずつ積み上げて成長していく姿を見ていただきたいです。応援よろしくお願いします!」

GW最終日は横浜FCシーガルズと対戦、石井 VS 大滝のマッチアップにも注目!

そんなバニーズ京都SCはゴールデンウィーク最終日となる5月6日、京都府亀岡市の亀岡運動公園陸上競技場にニッパツ横浜FCシーガルズを迎える。

「石井のスピード VS 大滝の高さ」というマッチアップや、バニーズのDFの選手たちがパスを繋ぎながら攻撃を組み立てる姿にも注目だ!

(写真提供:バニーズ京都SC、ニッパツ横浜FCシーガルズ)

筆者名:新垣 博之

創設当初からのJリーグファンで女子サッカーやJFLを取材するフットボールライター。宇佐美貴史やエジル、杉田亜未など絶滅危惧種となったファンタジスタを愛する。趣味の音楽は演奏も好きだが、CD500枚ほど所持するコレクターでもある。

Twitter: @hirobrownmiki

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