新競技の「お家事情」がtotoにも
東京五輪正式決定の翌日、日本サーフィン連盟が代表の愛称として発表した「NAMINORI JAPAN」のロゴ。
さて、2020年の東京五輪ではリオでの全競技に加え、5つの競技が追加実施される事になりました。もちろん、これらの新競技団体にもtoto助成があり、しっかりと使われているだろうと思っていた時期が、<表2>を作るまではありました(苦笑)。
若年層の中ではサッカーでしょうが、日本でもっとも人気のあるスポーツが野球なのは間違いありません。東京五輪での競技追加でも野球の復帰が第一で、女子野球の普及の低さをソフトボールの取り込みで補い、メジャーリーグの参加拒否問題を「開催地の意向」で押し切って実施にこぎ着けました。
ところが、五輪復帰でも日本の野球組織の複雑さは相変わらずです。大ざっぱに言えば、日本プロ野球機構が圧倒的に強大なプロと、社会人・大学・高校などの各組織が分立しているアマチュアの両方をコントロールする、サッカー界でのJFAのような組織はありません。それでも、アマチュア側は社会人と学生の「代表組織」として「全日本アマチュア野球連盟」が結成され、2013年に全日本軟式野球連盟の参加も受けて「全日本野球協会」と改称されました。
この複雑な野球界の関係図は、社会人や小中学生、女子などをまとめる「日本野球連盟」(旧日本アマチュア野球連盟)での解説にお任せします。
公認財団法人 日本野球連盟
http://www.jaba.or.jp/index.html
同サイト内「日本の野球団体図」
http://www.jaba.or.jp/gaiyou/etc/dantaizu.pdf
ところが、全日本野球協会には指導者講習会とドーピング検査事業として2016年度に1554万円がtotoから使われる事になっていますが、その公式サイトでは予算や決算が一切報告されていません。一般財団法人なので報告・公開義務がありますが、少なくともネットでは分からないのです。
従って、toto助成金が実際にはどれだけ回り、どう使われているかは謎のまま。これは野球やサッカーのファンだけではなく、社会全体の問題でしょう。
同様に、団体の収支報告が出てこないのは日本サーフィン連盟と日本ローラースポーツ連盟。このうち、ローラースポーツ連盟はさらに事情が複雑で、toto助成金としては2016年に1円も支給されていません。「選手強化費用」として、政府の支援金や企業の寄付金を元に支給される「スポーツ振興基金」から164万9千円が出ているだけです。
冬季も含め、五輪競技の中で支給されていないのはバドミントンを除くとここだけでした。しかもこの連盟、元々はローラースケートが中心で、スケートボードは2015年5月に委員会を作って初めて関わったのですが、東京五輪では本流のローラースケート系が採用されず、逆にスケートボードで「パーク」がIOC側から追加指定されました。
そのスケートボードの強化や普及の実務はローラースポーツ連盟の協力団体になった「一般社団法人日本スケートボード協会」が受け持つようですが、ここにはtoto助成金や基金は入りません。
「あれれ?ローラースポーツがスケボーに…東京五輪」(日刊スポーツ、2015.9.29)
http://www.nikkansports.com/sports/news/1545602.html
長くなるので簡単に触れますが、空手でも五輪で予定される「組手」(相手には当てない)ルールを使う全日本空手道連盟に加盟しない、「フルコンタクト」(相手に当てる)系の「全世界空手道連盟新極真会」(極真空手)や「全日本フルコンタクト空手道連盟」にもtoto助成金が支給されています。
公的介入が各団体の自主性を制限しては元も子もありませんが、toto助成とそれに並行したスポーツ団体の法人化は、各競技の事情を明らかにもしました。できれば、東京五輪という「国際公約」が運営の透明化を後押ししてくれればいいのですが。