「強い団体」に多くの配分

リオ五輪で行われたのは28競技、306種目でした。このうち日本が参加できなかったのはハンドボールだけで、10競技でメダルを獲得しました。ここでは「競泳」と「シンクロナイズドスイミング」を「水泳」として見ています。

メダル獲得競技に対応する日本の国内統括競技団体も10でした。その各団体と、参考として日本サッカー協会(JFA)が2015年にどれだけの額を日本スポーツ振興センター(JSC)から「スポーツ振興くじ助成金」として受けていたかを見たのが、<表1>です。一番右側の「toto助成比率」の高い順に並べました。

各競技団体の予算は毎年の変化が大きいのですが、メダル獲得競技団体の中では日本水泳連盟(水連)が最多額の1億5千万円あまりを受け取り、2015年度決算での経常収益に対する「toto助成比率」でも10.8%と最多です。

日本のアマチュアスポーツ界の中心は長く日本陸上競技連盟(陸連)とこの水連で、toto助成の配分でもこの両者が多くの額を獲得している、それだけ「助成獲得に強い団体」だと分かります。

Jリーグのスタジアム整備では「サッカー専用スタジアム」を求めるサポーターから批判される事もある陸連ですが、自分の組織運営ではtoto助成を上手く使っています。また、不祥事を超えてリオでは「本家復活」をアピールした全日本柔道連盟も9%近くの高いtoto助成率です。柔道52kg級で銅メダルを獲得した中村美里(トップバナー)は、2015年度のtoto助成授与式に柔道選手の代表として参加していました。

一方、日本テニス協会と日本体操協会は1%台前半で、toto助成にはほぼ頼っていません。プロアマ両方を管轄するテニス協会は大会の入場料と放映権料で多くの収入があり、元々の事業規模がテニス協会や水連・陸連よりは小さい体操協会は企業協賛金と日本オリンピック委員会(JOC)からの選手強化支援金が莫大です。これは「金メダルを2個しか取れなかった」とすら言われる(それほどあの個人総合は激闘だった)内村航平のおかげでしょう。

そして、日本バドミントン協会は2015年のtoto配分がありませんでした。正確に言えば、同協会は2016年1~3月の源泉所得税と合わせて「育成・強化委託金返金分」として2427万2千円を準備しています。このうちどれだけがtoto配分なのかは分かりませんが、恐らくは男子代表選手の賭博事件に関する対応でしょう。2016年は初めからバドミントン協会へのtoto助成は予定されていません。

気になるのはカヌーです。市街地には練習コースがなく、重量挙げへの自衛隊のような強い支援組織もない日本カヌー連盟は陸連の9分の1、水連の6分の1の予算で運営されていますが、そのtoto助成率は3.6%、水連の3分の1しかありません。銅メダルを取った羽根田卓也はスロバキアでの滞在費用が年間1千万円という報道もありましたが、アスリート個人の生活や競技団体の運営をtotoがどれだけしっかり支えられているのか、この数字からは不安を感じます。

比較的基盤の弱い、しかしメダル候補も含めて多くのトップアスリートが国外でも活動しているこのような競技に対してもしっかりと支援をできているのか、「買った」からにはtoto支援の使い道にも関心を持ってもらいたいと、私は思っています。


カヌー連盟の最大の支援企業はスバル(富士重工業)。2016年4月には全日本選手権に合わせて3台の車両を贈呈した。左から2番目にいるのが銅メダリストになった羽根田卓也。出典:Auto Prove記事「スバル カヌー日本代表の活動をアウトバックなどでサポート

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