2015-2016シーズンのブンデスリーガで、またもホッフェンハイムが残留した。同クラブはかつて宇佐美貴士が在籍していたクラブであり、比較的日本人になじみがある。

同クラブは“落ちない”クラブであり、一時期の大宮、新潟、ウィガンに通ずるものがある。絶望的な状況で残留したホッフェンハイムの軌跡などを踏まえて紹介する。

ホッフェンハイムは嫌われ者

ホッフェンハイムは1899年に創設され、ドイツ南西の都市ジンスハイムの一画ホッフェンハイムを本拠地とするクラブである。1990年代初期までは、7~9部を行き来するアマチュアクラブだった。しかし、1990年に同クラブユース出身者であるドイツ最大のソフトウェア企業SAP AG創始者ディートマー・ホップがホッフェンハイムに巨額の出資をおこなったのだ。

増資によって見違えるように強くなったホッフェンハイムは、自前のスタジアム建設やラルフ・ラングニック監督を招へいするなど着実に実績を積み重ねていった。遂に、ブンデスリーガ2部2007-2008シーズンで準優勝を果たし、念願のブンデスリーガ1部参戦が決定した。

このように巨額出資で成り上がったクラブであることから、資本主義を嫌うドイツサッカーフリークから目の敵にされている。スタジアムチャントでScheiß(クソ!)と叩かれることが多い。

また、トーマス・デメジエール内務大臣は、“ホッフェンハイム、RBライプツィヒ、ヴォルフスブルク、レヴァークーゼンは金満クラブ”という皮肉を示唆した。ホッフェンハイムと同じく新興勢力のRBライプツィヒは、文化を重んじるザンクトパウリから嫌われており、同グラブの公式ページではライプツィヒのクレストを非表示にしている。

フォルクスワーゲンで知られるヴォルフスブルクや製薬会社バイエルの所属クラブだった(1999年に分離独立)バイヤー・レヴァークーゼンも同様の理由で忌み嫌われている。ホッフェンハイムやレヴァークーゼンは健全経営かつ選手補強に大金を投入していないが、資本主義のクラブと長年レッテルを貼られている状況だ。

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