原口元気。

筆者が「ワンツーの“ワン”のパスに、返せという意志を込められる選手」と以前表現した荒削りながら強烈な意志を発揮することが出来るドリブラーは、多くの日本人アタッカーが通ってきたルートを使ってドイツ、ヘルタ・ベルリンに渡った。彼も、ドリブルに強烈な思い入れを持つ選手の1人である。

「バーレーン戦でタッチライン沿いに立った時、やっぱりタッチライン好きだなって思ったんですよ。ここからドリブルしていきたいって。トップ下で、普通にやっていたら(香川)真司君にはかなわないし、自分はゴリゴリと積極的に仕掛けて行くのが持ち味。きれいにやるのは自分らしくない。それに、世界では自分のスタイルを押し出していかないと通用しないと思うんで」(2012年)
http://number.bunshun.jp/articles/-/217075?page=3

当時から鋭いドリブルが注目されていましたが、ドリブルする時に心掛けていることはありますか?
「間合いには気を付けています。いかに自分の間合いに持ち込むかという点は意識していますね。ボールタッチに関しては小さい頃からずっとボールに触っていたので、トップスピードに乗ってもブレない自信があります。あとは自信を持って仕掛けること。それだけです。」

相手と対峙した時、抜くイメージを描きながらドリブルをしているのですか?
「いや、とっさにイメージが変わることもあります。最初は中に切れ込もうと思っていて、相手にコースを切られた瞬間に縦に行ったり。きれいに相手を抜ける時って、自分のイメージの反対を突いた時なんですよ。」(2012年)
http://www.soccer-king.jp/sk_column/article/34249.html

原口のインタビューから感じられるのは、自らのスタイルに対する強い拘りだ。そういった面は海外のアタッカーに近いエゴイスティックさを持っていると言えるかもしれない。

しかし、技術の部分に関する思考は未だに洗練されてはいない印象だ。「きれいに相手を抜ける時って、自分のイメージの反対を突いた時なんですよ」というのは「相手の予想を外す」という部分とリンクしてくる面白い表現だが、先に紹介した欧州最高峰のドリブラー達の思考と比べると「自らの創造性」に頼っているよう部分が大きいように思える。「自分の得意な間合い」に持ち込むことを優先している点も興味深いが、それもあくまで「自らのスキルをどう生かすか」という視点だ。

そして今回最後に触れてみたいのが、宮市亮。

俊足のワイドアタッカーとして、若くして名門アーセナルに才能を見出されたドリブラーは、ここ2年近く本来の存在感を発揮しきれていない。フェイエノールトで頭角を現し、英国ではボルトンへ。降格圏のチームにおいて、その類い稀なるスピードで度肝を抜いた。しかし、問題はそこから。2012-2013シーズンのウィガンでは、怪我とプレーの幅の少なさから出番を与えられず、現在トゥウェンテでも十分な出番は与えられていない。

個の力ということでスピードの話が出ましたが、その「個の力」を伸ばすために日々どういう練習をしていますか?
宮市亮「ドリブルに関しては、海外に渡って改めて、ドリブルに入る前のファーストタッチが重要だと感じました。自分の得意なシーンに持っていくために何ができるかというところを今は頑張っています。」(2012年)
http://www.soccer-king.jp/sk_column/article/33689.html

他の日本人選手と同様に、宮市の言葉からも「自らの武器であるドリブル」をどのように生かすかという意識は伺える。しかし、対面するDFに関するコメントはない。ガンバを優勝へと導いた、宇佐美貴史のインタビューなども探してはみたものの、やはり「対面する相手の思考」に関する言及はない。

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