鹿島のメンタリティとジーコスピリット
プロ4年目に入ってから出場数が伸び出した遠藤さんは、その後鹿島にとって無くてはならない中核として活躍した。利き足の左足から繰り出されるパスは敵陣を切り裂き、多くのゴールシーンを創出してきた。
獲得したタイトルはJ1を4度、Jリーグ杯3度、天皇杯3度、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)1度など主要タイトルを総なめにした。常勝鹿島を支えた男に勝者のメンタリティを尋ねた。
「うーん、分からないですね(苦笑)。 勝ちたい気持ちは、自分のためなのか、チームのためなのかで、全然違うんじゃないかな。サッカー選手は紙一重で、個人事業主だけど、チームプレーと言われるからよく分かんないですよ。 すごく矛盾していると思います。
その中で、アントラーズがずっとタイトルを取っているのは、犠牲心を払ってでもチームが勝つために、汚れ仕事の守備のところをみんな普通にやる。むしろやんないと試合に出られない。それが勝利のメンタリティというきれいな言葉になるのかなと。
あとは、本当にみんな負けず嫌いですね。フロントも、鹿島のスタッフ、みんな本当に負けず嫌いの中で、僕たちのプレーをさせてもらっていた。この人たちのために勝たなきゃいけないなと思わせてくれるチームですね」
ブラジル代表のレジェンドであるジーコさんが根付かせたスピリットは、現在も鹿島の選手たちに脈々と受け継がれている。
「(ジーコスピリットは)犠牲心だと思いますね。そのチームに対してとか、自分一人じゃ何もできないとジーコが言うんだから。『ジーコが言うんだったら、うちらもやらなきゃいけないよね』と、なるような存在ですね。
あの人が一番『チームのために走らなきゃいけない』『戦わなきゃいけない』と言ってくれていた。ただジーコの意見は特別なことを全然言っていないし、難しいことを言っていなくて、人として当たり前のことですね」と明かした。
チームのために己を殺してでも、勝利を手にする。口で言えば簡単だが、実際にピッチ上で表現することは極めて難しい。それでも愚直に勝利を追い求める鹿島イレブンは、我欲を捨てた献身性で数多くのタイトルを勝ち取った。
遠藤さんを含めた歴代の鹿島OBが口にする犠牲心は、鹿島では必要不可欠な概念となっている。