足踏みをせずに、前を向いて

この日チームの指揮を執った田村雄三監督は8年前も同カードでいわきを指揮していた。監督記者会見で当時を振り返った指揮官は「あのときはジャイキリみたいなことは言われていましたけど、それから年月が経って同じリーグで札幌さんを迎えてホームでできることは、我々が毎年ステップアップしてきたことでできている。だからこそ勝ちたかった」と1-1のドロー決着にきびしい表情を浮かべた。

ただあの伝説の番狂わせには思い出がある。現行体制になってからわずか2シーズンとチームの形ができ始めた中での金星は、より多くの注目を浴びた。現在も当時と変わらずフィジカルを押し出したサッカーを展開しており、『いわきの戦い方は間違っていない』というアイデンティティを形成する上で重要な一戦だった。

田村監督

「当時戦ったときに勝利できたということも含めて、いわきの名前を全国に広めることができたという話は、(大倉代表と話した)思い出があります」と優し気な表情で当時を思い返した。

あのときから8年が経過し、チームはJ2で3シーズン目を過ごしている。当時の所属選手は在籍していないが、『日本のフィジカルスタンダードを変える』というコンセプトとプライドは現在の選手たちに継承されている。

「当時私が指揮しましたけど、あの当時の自分ともまた違うかなと思っています。前のことなので、そこは足踏みせずに、しっかりやってきたことでいまがあると思っています。これからも足踏みをせずに、前を向いて取り組んでいきたい」と前を見据えた。

監督記者会見では札幌の指揮を執った岩政大樹監督も『厚別の番狂わせ』について問われ、「(当時の)僕が知っていたころは地域リーグのチームだったので、非常に早いスピード感で(上に)来られている。(いわきは)日本サッカーの発展に貢献されていると思います」と賛辞を送った。

岩政監督

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8年ぶりの再戦は1-1のドロー決着となったが、2度目の対決は9月13日にアウェーで開催される予定だ。あのときは番狂わせ、ジャイアントキリングといわれたが、次こそは対等な形で北の名門から勝利を挙げて新たな歴史を築きたい。

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