トライアウトの価値

トライアウトは多くのチャンスを創出してきた。プレーで見せる以外にも人間性が評価されて新チームに入団したケースがある。2021年次トライアウト前に練習中に右ひざ前十字靱帯(じんたい)断裂の大ケガを負って参加した当時ブラウブリッツ秋田満了のMF山田尚幸は、チーム関係者との名刺交換という形でトライアウトに参加した。

2024年のトライアウトに参加した山田尚幸

トライアウト会場でヴァンラーレ八戸で当時指揮を執っていた葛野昌宏監督(現、東北社会人1部コバルトーレ女川監督)の目に留まり、「縁あって『リーダーシップのある選手がほしい』と葛野さんが連絡を直接くれたときから『お前にキャプテンをやってもらう』と話されました」と八戸入団を勝ち取った。

2024年開催のトライアウトにも参加した山田は「こういう機会は選手にとって捉え方次第です。できればトライアウトに参加しなかったらいいだろうけど、このトライアウトに参加できない選手も中にはいる。その中で、僕たちはトライアウトを受けることができて、アピールする場が設けられています」と、用意されたアピールの場があることの有難みを口にしていた。

さらに山田のケースを記事で読んでトライアウトに参加した選手もいる。2023年次トライアウトで奈良クラブの契約が満了したMF片岡爽(オーストラリア、ロックデール・イリンデンFC)は、トライアウト前に足のふくらはぎを負傷したため、プレーを見せられる状況ではなかったが、名刺を片手に関係者にあいさつしてアピールした。

2023年のトライアウトに参加した片岡爽

「その上で、『いま自分にできることってなんだろう』と考えたときに、もちろん去年の山田選手の前例もあったことがすごくありがたいことでした。自分にいまできることをやろうと思って名刺を配って、少しでも自分の名前とかを知ってもらおうと思いつきました」と会場であいさつ回りをしていた。

片岡はJリーグクラブへの返り咲きは果たせなかったが、トライアウト会場で知り合った関係者との縁でオーストラリアでの挑戦を決意し、同国で現在もプレーしている。

【インタビュー】大ケガからの契約満了、名刺を配ったトライアウト、J3八戸MF山田尚幸が逆境を乗り越えて成し遂げた偉業とは

このようにプレーでアピールできない選手に対してもアピールの機会を設けるJPFAの柔軟な運営により、キャリアがつながった選手もいた。このトライアウトの課題は多くある一方で、新天地を探す選手にとって多くのチャンスが得られる価値も秘めている。今後選手、選手会、クラブがwin-winとなる改善が行われ、今後も契約を満了した選手たちに多くのチャンス、未来をつなげる機会であり続けてほしい。

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