ハルキウの日常が破壊され
ロシアとウクライナの国境近くの都市であるハルキウは、ロシア軍による全面侵攻が開始して以降、絶えずロシア軍の攻撃に晒され続けている。
EURO2012の試合会場としても利用されていたハリコフスタジアムも、ロシア軍の攻撃によって破壊された。この惨状は、ウクライナサッカー協会会長を務めるアンドリュー・シェフチェンコ氏によって、今年開催されたEURO2024の中でも伝えられ、ヨーロッパサッカー界に大きな衝撃が走った。
──戦争が始まって、来日するまではどのような状況でしたか。
「戦争が始まったときは、ロケットや戦闘機について、まったく未知の状態だったのでとても怖い気持ちで過ごしていました。
ハルキウはロシアと近いので、ロシア軍が侵入した時期もありました。そのときは人生で感じたことがないような怖さで、自分がどうすればいいのかまったく分かりませんでした。
もちろん、だんだんこうした状況には慣れてきます。とはいえ、あすはどうなるか分からないことへの不安がすごかったです。避難場所やシェルターに避難することもあり、そういったときは怖い気持ちになりましたね。
特に、ハルキウに住む友達のアパートがロケット弾で破壊された瞬間を見たときは、すごくショックを受けました。
幸い、攻撃を受けたときに友達はいなかったのですが、その家はみんなでお泊りをした思い出もある場所で、『よく行っていた、生活していた場所』が破壊されたことに対するストレスは、これまで感じたことがないものでした」
──メタリスト・ハルキウのスタジアムや施設が破壊されているニュースもありました。
「トレーニングセンターが攻撃された光景を見たときはとても悲しかったです。
ここも子供のころの色んな思い出がある場所だったので、ショックを受けましたし、泣きそうにもなりました」
──戦争の影響でメタリストはスポンサー集めにも苦労していると聞きます。
「いまのウクライナのリーグは、本来のホームタウンでプレーすることができないチームが増えていて、スポンサーが入らなくて解散するチームも沢山あります。
だから、いま難しい状況で頑張っているウクライナの選手たちをリスペクトしています」
──ハルキウはロシアとのつながりも深い地域で、親戚や友達がいるという人も珍しくないと聞きます。複雑な感情はありますか。
「その感情を表現することはとても難しいです。
例えば、ウクライナとロシアの両方にルーツのある家族は、家の中でトラブルが起こり、一切話さなくなった家もあると聞きました。
みんな自分の考えがあるので、気持ちを伝えることはとても難しいと思います」