PK戦でも笑顔を絶やさない

試合は延長戦を終えても決着が着かず、PK戦へと突入。富士大のファーストキッカーが失敗し、仙台大イレブンは的確なシュートでネットを揺らし続ける。そして3-4の仙台大がキックを成功させれば勝利が決する場面でゴールマウスを守る男は笑っていた。

「あいつこの場面でも笑っている…」と静寂に包まれる会場で藤田を畏怖する声が聞こえてきた。ホイッスルが鳴ると、藤田はシュート方向へ横っ飛びするも、わずかに手が届かなかった。

決着がつくと仙台大イレブンは歓喜の輪を作り、優勝に酔いしれていた。さすがの藤田も試合終了直後は表情を曇らせていたが、表彰式が終わるとサッパリした笑顔で取材に対応してくれた。

準優勝に終わった富士大だが、全国大会出場権は獲得している。昨季に続く全国大会2連覇を期待する声もあるが、守護神は冷静に大会を見据えていた。

「去年の優勝という壁はとても大きいですけど、そこと並べるようにチームは全国ベスト8を掲げています。まずそこの目標をチームで目指しながら、去年の壁もしっかり超えられるように努力していきたいと思っています。優勝はとても難しいと思いますけど、そこに向かう努力はチームでしていきます。チームで一丸となって戦えればと思います」と闘志を燃やした。

プロ志望の藤田にとってJリーグクラブのスカウトが集結する総理大臣杯は重要な就職活動の場だ。全国大会でも持ち前の明るさとダイナミックなプレーでスカウトのハートをつかむ。

「自分のポジティブな声掛け、迫力あるプレー、セービング、キック。どんなとこを取っても安定したプレーの中で自分の武器を出していけることが自分のストロングだと思います。そういったところを見ていただいて必要とされるチームに入れればと思います」と決意を明かした。

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藤田は会場を去るまで明るく振舞っていた。昨季富士大が成し遂げた偉業を再び達成することは困難極まりないだろう。だがこの男なら不可能を可能にするとさえ思わせてくれるほど、藤田はなにかを期待させてくれる。富士大が誇る笑顔の守護神から目が離せない。

(取材・撮影 高橋アオ)

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