――過去に生産していたリバーシブルユニフォームをはじめ、UMBROの創造の源泉について。

コリン:インスピレーションはさまざまな形を伴って現れますが、最も重要なことは、消費者を理解し、彼らが何を欲しているかを知ることです。これはアスリートだろうが、ストリートにいる人たちだろうが、関係ありません。

リバーシブルユニフォームも当時としてはユニークな発想でしたが、現代のアスリートが求めているのはとにかく軽いものです。端的に言って、リバーシブルユニフォームの多くは生地が二重になっているため重く、おそらく今後復刻することはないでしょう。今は軽量で、通気性に優れ、体温調整機能があるものに注力しています。

――会社として取り組んでいるサステナビリティについて。

アンソニー:リサイクル素材を使用した商品を開発するなど、可能な限りサステナブルなブランドであるように大限意識しています。近年は、飛行機によって排出される温室効果ガスの排出を鑑みて、世界各国への出張を減らしました。

ヘレネ:サステナビリティの大きな一歩として、数年前に植物由来のインクやリサイクル素材を使用したパッケージに刷新しました。また、フットウェアにおいては、どれだけサステナブルでいられるか、という制限があるように思います。これについては、コリンに説明してもらいます。

コリン:出来る限り再生素材を取り入れるようにしており、今はスパイク『ヴェローチタ』のアッパーにリサイクル素材を、アウトソールにトウゴマ由来の新素材を使っています。

しかし、単にリサイクル素材を使えば良いということではありません。耐久性のある高品質のプロダクトを作ることも非常に重要で、それこそが究極的に一番サステナブルなものだと思います。

例えば、先日のエキシビションで多くのヴィンテージアイテムが展示されていたように、UMBROのプロダクトは長持ちするように製造されてきました。それが、サステナブルの何よりの証拠です。

――先日の100周年イベントについて。

アンソニー:ウェストミンスター大学でのイベントは、単なる歴史の授業ではなく、UMBROがいかに重要なブランドだったかを物語っていて、私個人としても非常に有意義なイベントでした。

中年の男性がノスタルジーを求めて来るだけでなく、ブランドを深く理解してくれているZ世代も訪れ、SNSで感動を分かち合おうとしている姿は感動的で、これ以上ない瞬間です。チームとしても、100周年を迎える2024年のタイミングで、ブランドを守る立場にいられることを光栄に思います。

ヘレネ:私にとっても印象的だったのは、イベントは当然、2025年春夏コレクションのセールス会議を会場の横の部屋で行っていた時間です。

どういうことかというと、過去を振り返りつつ、同時に未来の話をしていたのです。マーケティング担当者として、このような瞬間に立ち会えることは滅多にないと思いますし、ミーティングに参加していた人たちの多くも、同じように感じていたのではないでしょうか。

100周年イベントを開催することで、単なるスポーツブランドというだけでなく、イギリスのスポーツカルチャーやテキスタイル産業の一旦を担ってきた、UMBROの重要性を見事に示すことができたと思います。同時に、どのように次の1世紀を駆け抜けていくかについても話すことができました。

UMBROは、“もう100周年”ではなく“まだ100周年”です。

コリン:プロダクトの観点から話すと、初期のアイテムを手に取ることで、服作りに宿る技術や見識を得ることできて非常に魅力的でした。私の立場からしたら、ご褒美みたいな時間でしたね。

ヘレネ:イベントには、私たちですら見たことがなく、アーカイブにも残っていないようなアイテムもいくつかありました。その中で、フットボールではなく、デザインの単純な美しさと機能性の観点から、特に目立っていたアイテムが2つありました。

1つは、1950年代のボート用のローイングショーツです。完璧なデザインと痒いところに手が届く作りで、現代のデザイナーズブランドの店に並んでいても違和感がないでしょう。もう1つは、テッド・ティンリングとのコラボアイテムの1つだったポロシャツで、時代を超える美しさでありながら同時にクラシックでもあり、こちらもハイエンドな店にあっても全く引けを取らない逸品です。

コリンが言ったように、技術とはつまりデザインに直結するもので、高度な技術で着用者のことを理解して適に作ることこそが、アイテムをタイムレスで美しいものにするのです。

――それぞれが思うUMBROらしさについて。

アンソニー:UMBROを唯一無二の存在たらしめる要素は、数え切れないほどあると信じていますが、やはりスポーツ業界において100周年を迎えたことはとても珍しく、これこそがUMBROらしさだと思います。

それにイギリス、もっと言えばマンチェスターのブランドであるということも大きな要素で、どれほど素晴らしい街かを何時間も話せます。それに、UMBROはスポーツに限らずファッションや音楽にも影響力があります。

先ほどヘレネも触れましたが、大衆に寄り添っていることも UMBROの核です。フットボールひいてはスポーツは、あらゆる人に開かれていると信じていますし、我々もできる限り人々に寄り添うブランドであろうと努めています。

ヘレネ:UMBROらしさはいくつもあるので、1つに絞ることは難しいですね。私が思うに100年間を振り返ると、UMBROはブランド自身を刷新し続けてきました。だからこそ、常に新しい消費者の動向や歴史的な変化に適応できたと思います。

また、ブランドの“人間らしさ”も大きな強みです。ブランド初期の頃から商品紹介や市場における消費者へのアプローチの仕方、ハロルド・ハンフリーズのビジネスの指揮の取り方など、UMBROは常に家族のような一体感やパートナーシップ、コラボレーションに基づいたビジネスをしてきました。

他のブランドには独自のやり方があるので例に挙げたりはしませんが、UMBROは決してエリート志向や個人主義ではありません。常にグループや家族、チームのことを第一に考えてきました。

私は他のブランドでも働いてきましたが、UMBROに関して言うと、家族のような温かみもあるし、ハロルドが今もオフィスのどこかにいるような雰囲気すらします。私たちはチームで、今でもハロルドとも一緒に働いていることこそが、UMBROの特性の1つだと思います。

これは、消費者に対しても同様です。私たちは消費者の友達であり、ブランドとしてではなく、同等の立場で話している。これこそが、UMBROが他のブランドと一線を画す理由だと思います。

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コリン:アンソニーとヘレンの言う通り、歴史と遺産こそがUMBROの強みだと思います。スポーツについての深い知識が、ブランドを独自の存在にしてくれています。

一方で、ブランドで働く人も重要です。UMBROには勤続年数が長い人が多いのですが、これは家族気質な社風や彼らの情熱によるもの。長いことビジネスの世界に身を置くことは健康的ではありませんが、社員の多くはUMBROで働くことを楽しんでいます。

彼らはビジネスの知識を深めながら、ブランドと共に成長している。社員こそが、UMBROがUMBROらしくあり続けることに貢献してくれています。

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