堅守速攻と相性抜群のスタイル

ラストパス以外にも2列目の飛び出し、左利き選手ならではの相手の逆を突くセンス、幅広い視野から的確な選択をする状況判断能力などに優れているが、マタの特筆すべき長所は堅守速攻との相性の良さにある。

マタはこれまでスペイン1部バレンシア、イングランドプレミアリーグのチェルシー、マンチェスター・ユナイテッドに所属してきた。どのチームもフィジカルを重視した堅守速攻のチームであり、マタは猛獣使いの如くフィジカルモンスターを手足のように動かしてきた。

例えばスピードと推進力のある選手に対しては、ボールをキープしながらマークを引き付けて、ラインブレイクを促すスルーパスを前線に打ち込む。

ヘディングに長けた選手であれば、局面に合わせてボールの球種やスピードを変えてピンポイントクロスを放つなど、堅守速攻のスタイルで重用される選手との相性がいい。

極めつけは攻守のトランジション(切り替わり)を予期したポジショニングと切り替わった瞬間の初動の速さにある。予測と経験則により、切り替わる瞬間に顔を出して、クリティカルなパスを展開する。

このトランジションのスイッチャーとしての役割を強度の高いプレミアリーグでしっかりこなした。判断の速さと、読みの正確さなどが並外れていた。

神戸の戦術も同じく堅守速攻型であるため、マタの特徴を十分に引き出せる環境にある。そしてマタはキャリアを通じて堅守速攻のノウハウをしっかりと理解しているため、神戸にとって打ってつけの人材になり得る。

選手層が薄く、試合後半になると厳しい展開に陥りがちだったチームにとって、大きな変化を与えられる可能性がある。