ダービーは絶対に負けてはいけない戦い

――なるほど。あの天皇杯でのみちのくダービーの位置づけは特別だったんですね。

僕が選手で仙台に移籍してきた2001年のときに、初めてダービーを経験しました。引き分けすら許されなかった状況で、実際に厳しい言葉もサポーターから投げかけらました。「やっぱりダービーは、こういうものなんだ」とサポーターに教えられたような瞬間があったんですよね。

そこからは色々な立場でプレーヤー、引退した後もユースのコーチ、トップのコーチ、監督としてもダービーを経験しました。いずれにせよどのゲームでも「ダービーは絶対負けちゃダメだ。勝たなきゃダメ。練習試合でも」と、ずっと自分自身に叩き込まれたし、逆に植え付けてきたつもりです。

ただ天皇杯準決勝はダービーというよりも、天皇杯なら準決勝を勝って、決勝でどうやって勝とうかというところだった。

たまたま準決勝の相手が山形だったんですよね。あまりダービー感というものを、僕自身あまり感じていなかった。

(私の中では)天皇杯準決勝で勝って、決勝も勝つプランで、僕の中で進んでいた。そういう意味ではそのダービー感が全くない唯一の試合でした。

――山形側は公式戦で8年勝利から遠ざかっていて、リーグ戦ですと13年勝利が遠ざかっている点について、監督はどう感じていますか。

全く気にしていないです。もしジンクスというものがあるとしたら、破るためにあると思う。

過去をいくら掘り返しても、それは自分たちにとってポジティブな歴史だったとしても、それが次のゲームに勝つ保証にはつながらない。

――ただそれだけ勝利が遠ざかっていますと、山形サポーターもダービーの勝利を渇望していると思います。仙台を倒す上で明かせる範囲でのビジョン、攻略法を教えてください。

頭の中にはありますけど、明かせないです(笑)。

――ありがとうございます(笑)。今回のダービーで主導権を握る上で、球際や攻守の切り替えなど様々な要素がありますけど、どの部分を重要視していますか。

球際や切り替えの部分はダービーだからというわけではなく、どのゲームにおいても凄く重要な要素になる。ダービーでも同じようにそこは選手には求めます。ただ、前回アウェーですごく悔しいダービーの敗戦を喫した。

我々はサポーターからブーイングを浴びた。それは僕らの脳裏に刻まれています。その悔しさをエネルギーに変えて、その後のゲームを我々は進めてきたところもあります。

前回の対戦の悔しさは絶対晴らさなければいけない。それをエネルギーに変えなければいけない。そのようなメンタリティーになってくると思います。

ゲームの中でどうやって主導権を自分たちが握るか。主導権を握るというと、ボールを握っている方が主導権を握っていると誤解をする人がいっぱいいる。別にボールを保持するつもりは全くないです。

いかに相手の背後を取って、我々が相手のゴールに迫れるか。それが、我々が主導権を握っていることだと僕は理解をしている。(攻撃は)そういうシーンをより多く作り出し、守備ではそういうシーンを相手に作らせない。そういったところが非常に重要になってくると思います。