ウクライナ戦争とコソボ問題。代表監督の行方さえ左右する「政治とサッカー」
こ数日、セルビアメディアではコソボ問題が大きく報道されている。
コソボ紛争時の1999年、NATOによる空爆以降のセルビアは世界各国からの制裁を受け、経済的にも大ダメージを負った。その中でロシアは長年、変わらずセルビアの後ろ盾とも言える存在だった。
しかし、コソボに関する政治面のみならず、エネルギー面でも食料供給面でも最も重要な友好国であったロシアの現状は、セルビアを難しい立場に追い込んでいる。
これまでのセルビア政府は、国営放送でも教育現場でも西側諸国を仮想敵国とし、国内の不満をコントロールしてきたことは否めない。
だが今後は「西側からの支援なしにセルビア経済の立て直しはあり得ない」と現政府は考え始めたようだ。EU加盟のためにはコソボ問題の解決が必要不可欠であり、現大統領のアレクサンダル・ヴチッチはコソボを事実上承認する方向に舵を切ったようである。
しかし、20年以上の報道と教育の成果で「西側諸国にコソボを奪われた」と思い込んできたセルビアの一般市民にしてみれば、この突然の方針転換は到底容認できない。
レッドスターのウルトラス「デリイェ」も当然、「コソボはセルビア」という立場を徹底している。今週あたり、リーグ戦でコソボに関する横断幕が出るタイミングである(といってもこのタイプの横断幕は年がら年中出るのだが)。
またサッカー界では、3月14日にセルビアサッカー協会の会長選が控えている。
レッドスターOBの2人が立候補しているが、そこは陰謀渦巻くセルビアサッカー協会。会長選の結果によってはセルビア代表監督を務めているピクシー(ドラガン・ストイコヴィッチ)の立場もどうなるか。
そして、3月下旬には早くもEURO2024予選が始まる。今後の展開に注目したい。