――アカデミーで大会に出場したりすると、「沖縄の子供たちはプレーのリズムが違う」と他の地域の人に言われると聞きました。

Jクラブのアカデミー担当者が来るとだいたいそういったことを言いますね。リズムが違ったり、身体能力が高い子供はたしかに多いです。

ただやっぱり、それ以外の部分ですよね。ボールを扱うスキルだけではなく、ポジショニングなどたくさんありますが、それ以外の部分ではちょっと弱いかなと思うところがあります。

そういった意味で、プロクラブがキャンプをやってくれると沖縄の指導者たちは見て学ぶことができますし、それを子供たちに落とし込むことが地域全体のレベル向上につながります。

プロだからできる部分は当然ありますけど、基本的にサッカーはサッカーです。高校生でもやっているトレーニングをプロでもやっていて、ただパスのスピードなど“意識”をどう持つかで効果は全然変わってきます。

「どういう意図でこのトレーニングが行われているか」が重要なので、そこを理解すれば子供たちに落とし込むことは可能ですし、良い循環が生まれてくることを期待しています。

外に出ていかなくても、年に1回、必ずこういう機会が訪れる。沖縄のサッカーキャンプが定着してきたのはここ数年なので、まずは続けていくことが大事です。

――キャンプだと試合だけでなく練習もしっかり見られるのがいいですね。

試合だけだとやっぱり分からないじゃないですか。しかも、シーズン前のキャンプってちょうどチームを作る段階なんですよ。監督が選手たちにやってほしいことをトレーニングの中で伝えていく。まさにチームに落とし込む時期なので、ある意味一番いい時期の練習を見ることができます。

シーズンが始まると選手たちはもうある程度意図を理解した状態で、より発展的な内容になっていきます。

キャンプはチームを作ろうとしている段階でのフィジカル面や戦術面のトレーニングが見られますし、一つのチームに絞って見ていればトレーニングしたものが試合のどの場面で出ているかもチェックできます。本当に貴重な機会です。

監督、そして選手としての「今後」

――監督・高原直泰としてチームを指導しながら成長してきた部分はどの辺りですか?

難しいですよね、監督って。選手たちにやってもらいたいことを当然自分は分かっていますが、自分だけが分かっていても仕方ありません。それを理解してもらうためにメニューを考えてトレーニングするわけですが、トレーニングの中でもいろいろなことを伝えていかなくてはいけないので、すごく大変だなと正直思いました。

自分たちのチームはプロでやっていた選手とそうではない選手がいて、後者の選手たちには伝える内容が10あればやはり10に近いところまできっちり伝える必要があります。もちろん全員がプロとなればまた違うと思いますが…監督、やっぱり大変だなと。

正直あまり向いてないなと思いました(笑)。面白いは面白いんですけどね。将来的にこちらではないのかなという感じがしています。

ヨーロッパはだいたい監督とコーチがセットで動きます。「自分が監督になったら、誰がコーチ、誰がGKコーチ、誰がフィジコ」といった感じで。実際に監督をやってみてその意味がよく分かりました。

ドイツにいた時も結構多かったです。監督も現場にいるけど、練習は基本的に全部コーチがやって、監督はただ見ているだけ。

もちろん言うことは言うのですが、信頼するスタッフに現場を任せながらチームを作っていく。今後やるとすればそういうスタイルがいいかなと思っています。