その言葉通り、プロになるまで険しい道を歩んできた。浦和レッズユースで研鑽(けんさん)を積んできたが、「自分たちは谷間の世代だった」という。

同期にはトップチーム公式戦最年少得点記録を持つ邦本宜裕(2014年退団、韓国1部慶南)、新井瑞希(J3・富山)らがおり、Jユースカップ初制覇など結果を挙げてきた。だが頂点の壁は厚く、97年生まれ世代でプロに昇格した選手はいなかった。

その中でも松尾はトップチームの練習に一度も参加できず、挫折を味わった。それでも転機はすぐ先にあった。

仙台市出身で当時ユース監督だった大槻毅現トップチーム監督の勧めや、同ユースから仙台大に進学したフィリピン代表の佐藤大介(タイ1部ムアントンユナイテッド)の影響もあり、みちのくの強豪に進学した。

その後は名将・吉井秀邦監督兼GM(以降監督)の下で、東北学生リーグ2017年シーズンは14試合25得点で得点王、翌年には12アシストでアシスト王に輝くなど傑出した才能が花開いた。

憧れの舞台に向けて着実に一歩ずつ足跡を刻んできた。そして今、追い求め欲した場所にたどり着いた。6月12日に横浜FCから松尾の加入内定が発表された。

「大学に入ってからプロを目指していたけど、オファーが来たときはびっくりした。(自分が)目立っていたわけではないので、運がよかったと思う。本当にホッとした」

と振り返った。

17日に同大キャンパス内では加入内定会見が行われ、フラッシュを浴びながら水色のユニホームに袖を通した。プロ入りまでまばゆい脚光を浴びることがなかった。それでも遅咲きと自称する松尾は、念願の切符をつかんだ。