グアルディオラに繋ぐバトンリレーが的確だったマンチェスター・シティ

「最強のバルサ」を作り上げたグアルディオラ監督を迎えた2年目となった昨季、マンチェスター・シティはイングランドのトップリーグ史上初の3ケタ越えとなる勝点100を獲得し、プレミアリーグを制覇した。

全38試合で32勝4分2敗、106得点27失点の得失点差+79。勝点、勝利数、得点、得失点差でリーグ史上最多の数字を記録する。まさに「相手はボールにすら触れない」プレースタイルそのものを象徴するような記録尽くめのシーズンだった。

そんなマンチェスター・シティが現在の強さを手にしたのは、グアルディオラ監督の手腕によるものだけではない。もちろん、現在も所有権を持つUAEの投資グループ=アブダビ・ユナイテッド・グループ・フォー・デベロップメント・アンド・インベストメントによる買収(2008年夏)からクラブの様相が一転したのは確かだが、だからといって「湯水のごとく大金を注ぎ込んで大型補強を繰り返したから強くなった」と言うつもりもない。そこにはしっかりとした“進化過程”があったからだ。

ロビーニョから始まった大型補強は当初、あまり成功をもたらさなかった。しかし2009年12月、インテルでは現役時代からは想像できない手堅いチームを作って実績を積み上げた「イタリアの伊達男」ロベルト・マンチーニ監督が就任した時からチームの土台が作られ始めた。

マンチーニが緻密な守備組織を構築したことで、マンチェスター・シティは2011-2012年シーズンにプレミアリーグ初優勝を遂げた。

次に、2013-14シーズンからはスペインの中堅クラブであるビジャレアルやマラガに流動的なポゼッションサッカーを根付かせたマヌエル・ペジェグリーニ監督が就任。テクニカルな2列目の攻撃的MFダビド・シルバやサミル・ナスリに加えて、当時はセカンドトップだった主砲アグエロまでもが同サイドに寄ってプレーする場面もあった。個人の能力やアイデアを活かしたポゼッションサッカーにより、ペジェグリー二体制は1年目でプレミアリーグとリーグカップの2冠、3年目にもリーグカップを制した。

そして2016年の夏には、満を持してグアルディオラが就任した。1年目から両サイドにウイングを配置して攻撃に「深さ」と「幅」をもたらす理想を追い、初年度こそ無冠に終わったものの、2年目で完璧な独走優勝。同じポゼッションサッカーでも自由が売りだったペジェグリーニ体制とは違い、パスワーク時の「5レーン理論」や守備への切り替え時にボールの即時奪回を目指す「6秒ルール」などで、個々のポジショニングや守備意識、攻守の切り替えが組織的にも完成された。

グアルディオラの手腕はもちろん見事だが、守備組織が安定しなければチーム力を押し上げることはできず、ポゼッション志向に切り替えてスタイルに合ったタレントを集める期間も必要だった。

つまり、マンチーニとペジェグリーニによる段階的な進化過程がなければ成立しなかったバトンリレーの妙が今日の成功を築いているのだ。