――限界を超えるためにはそのような指導者が必要になってきますね。前に地域リーグのある監督とお話させて頂いた時にも出た話題ですが、その監督の言葉として印象的だったのが「昔の選手のほうが今の選手よりも気持ちが強かった。それと同時に感じるのが、今の選手のほうが上手いけど、昔のほうが個性があった…」と。
それって、日本の社会的な問題もあると思います。豊かになって、全体的に緩くなったんじゃないかと。
例えば、日本では「いじめるやつが全て悪い」、「お金を取られるやつが全て悪い」みたいな発想になりがちです。
ですが、海外では「いじめられるやつも悪い」、「お金も取られるやつも悪い」という考えがあります。
そうなれば、誰もがそうならないようにしますよね。やられてもただで終わらせないというか。
それが気持ちの強さを生んで、個性化にも繋がるんだと思います。
――その話で言えば、海外にも豊かになった国はいくつもあります。でも、彼らは闘争心などをなくしていない印象もありますが…
やっぱり、そこは国の歴史が関係するんじゃないでしょうか。
海外では自分の国を守るために他国と常に戦ってきた歴史があります。
日本もそういう時代がありましたけど、その経験値が違うんじゃないかと。
――これまで能登選手がプレーしてきた、インドネシア、タイなど、アジアの国々をみたらどうですか?
やっぱり、日本とは違いますね。
同じアジアでも全然違います。彼らも攻め込まれ続けている歴史ですからね。
――比較的、大人しそうな民俗性かと思っていましたが、それは意外です。
普段は大人しくても、スイッチが入ると目の色が変わりますね。
――そこまで考えると、サッカーだけでは変えられない部分もありですね。
「絶対におれはこうしてやる」っていう選手も少ないですよね。
子供の時からそうですけど、全員が中盤気質というか。良くも悪くも「クレイジー」が人間が少ないんです。
――たしかに、飛び抜けている選手は少ないですね。小学生の試合とか見ていて思うのは、子供の時ぐらいは我を通して欲しいなぁと。
僕がまさにその代表例でした!
CKとかも味方に合わせずに全部直接狙ってましたからね(笑)
その反面、周りからは嫌われてましたが…
――海外の子供たちでもそうなるんですかね?
いや、海外は認めさせてしまえばいいんです。すぐにヒーローになりますからね。「あいつはすげー!」って。
でも、日本の子たちはそこを目指さないんですよね。
自分がそこに行くのは難しい…メッシには憧れるけど自分はなれない…ってすぐに線引きしてしまう。
――そこを変えるのは指導者の力で可能なのでしょうか?
僕はサッカーを教える時は「技術だけではなく人間性も変えよう」と思ってやります。
そこが変われば全てが変わるし、サッカー以外でも活きてくると思っているので。
――人間性の面ですね。
そうです。
だから試合になったら自分のチームの子供たちに「おれのチームは絶対に負けないから!」と気持ちを入れるところから始まります。
試合でゴールをして喜ばない子がいたら「ナイスシュート!」、ボールを取ったら「ナイスディフェンス!」とウザいぐらいに声を掛けます。
最近は点を決めても喜ばない子供が多いんですよ。だから、無理やり喜ばします(笑)