セビージャはサンパオリと彼のアシスタントであるフアンマ・リージョの夢のタッグが織りなすファンタジーをシーズン当初から見せてきた。そのファンタジーを抑え込み、現実にすり寄せてきた過程は今季のリーガファンの楽しみの一つとなっている。

そのなかで、セビージャを牽引してきたのは間違いなくフリーロールとなって八面六臂の活躍をしているサミル・ナスリだ。チームにおいて、そのポゼッションの要としてチャンスメイクを演出している彼の存在抜きでは語れないだろう。

事実、セビージャの中でもスペシャルな存在として相応しい役割を与えられている。フリーマンのように味方ボールホルダーのサポートに入って、相手のチェックが掛かりきっていないオープンな状況でボールを受けることが多い。

2列目からピボーテのエンゾンジのところまで列移動ができるのはナスリだ。そこから運ぶドリブルで相手DFラインを突破しては押し下げ、ライン間にボールを配球するといったタスクが割り振られている。

サンパオリのサッカーはレーン毎の整理をして、個人戦術よりもポジション的な優位性を作り出すことによって「その場で」技術を輝かせるような舞台を仕立て上げている。ナスリは自由を謳歌するように恩恵を授かっているのだ。相手の4-4-2ブロックの2トップ脇から中央ゾーンを支配し、運ぶドリブルを駆使して配球する。

ナスリの起用によってもたらされるものもあるが、同時にイボーラとエンゾンジの組み合わせよりもネガティブトランジションで失っているものもある。

守備の強度や後方のバランスである。

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