日本時間9月19日はスコットランドの独立問題とその国民投票によって世界中の注目をおおいに集めた。そして同日にEURO2020の開催都市が決まった。UEFA60周年を記念して、プラティニの提案により決定した欧州の13都市で開催される前代未聞な規模の大会のファイナルはフットボールの聖地でもあるウェンブリーとなった。まさにその還暦を祝う大会として相応しいものになる予感がする。
本コラムではその名誉ある13都市に選ばれたうちの1つでもあるスペインのビルバオについて記していこうと思う。ビルバオにあるスタジアムといえば、フットボールファンなら誰もが知っているだろう。『要塞』と恐れられているサン・マメス・バリアである。
【サン・マメスからサン・マメス・バリアへ】
スペインで10番目の人口(35万人)にあたるビルバオに暮らす人々とその歴史を作ってきた旧サン・マメスはおよそ40000人のキャパシティを誇り、アスレティック・ビルバオという気高い戦士たちをサポートしてきたが、100年という節目の年にその役目を終えた。
サン・マメス・バリアの建造計画は今から10年前の2004年に浮上した。そして2006年に具体的な契約が交わされ、その3年後には纏まった建設計画が作成された。翌年から本格的な建設がスタート。途中で工事が難航するという困難を無事乗り越え、2013年9月16日に行われたリーガ・エスパニョーラ第4節セルタ戦で、新たな歴史のバトンが手渡されたのである。建設費は2億1800万€で、収容人数は53289人。スタンドの傾斜やピッチまでの近さはカンプ・ノウやサンチャゴ・ベルナベウ、ビセンテ・カルデロンといった同じサッカー専用スタジアムならではのものである。スタジアム内の反響音やその概観や内部はスペインでは珍しい英国式をイメージしており、中心環で区切られたフィールドを囲むアンフィシアターには122のVIPボックスが備わっている。
スタジアム自体はビルバオ市の中心部にあり、ビルバオ市を走る2本のメトロはスタジアムへのアクセスをスムーズに。余談であるが、年間100万人が訪れる観光地・グッゲンハイム美術館から徒歩15分ほどの位置にあり、サン・マメス・バリアはフットボールファンのみならず、その美麗な外観は観光客を惹きつけているようだ。
こういったアクセスの良さやスタジアムのキャパシティがUEFAに高く評価され、EURO2020の開催都市の1つとなった要因である。サン・マメス・バリアではグループステージ3試合と決勝トーナメント・ラウンド16の1試合が行われる。サン・マメスが代表レベルの国際舞台となるのは1982年スペインW杯以来であり、2020年にはビルバオの街に38年ぶりに輝かしい代表選手たちが1つのボールを巡ってドラマを生み出す熱い日がやってくるのだ。
しかし、今回無事にホストに選らばれたが懸念事項も当然あった。ビルバオ市とビトリア空港との移動性と市内のホテル能力が主に議題に挙がっていた。まだ時間はあるのでホテル能力は改善されるとしても、ビトリア空港からのアクセスという面はマイナスであることには変わらないだろう。それでもそれらを上回る魅力がサン・マメス・バリアとビルバオにはある。
RFEP(スペインサッカー連盟)のホルヘ・ペレス・アリアス書紀長はこうコメントを残した。
「私たちはビルバオの街とフットボールが合わさって非常に知識を有し、友好的なエキスパートなものだと確信していますので、ホームとして相応しいと考えています」