4バック⇒3バック。刷り込まれた意識の利用
前編でも述べたように、ユベントスのシステムは中央への守備を優先するようにデザインされていた。当然、得点が必要になったレアル・マドリードはサイドから攻撃を狙ってくることになる。
特に、守備で若干劣る左SBのパトリス・エヴラの所をレアル・マドリードは狙い撃とうとする。
「エヴラの所から攻め込み、数的有利を作って攻略」
それが実際、最も正解に近い選択肢のはずだった。
しかし、ここでアッレグリが動く。アンドレア・バルザーリを投入することによって4バックから3バックに変更したのだ。エヴラのサイドからの攻めで、ドリブルで内側に切れ込まれるパターンに対してCBのキエッリーニという保険を用意。更に、ファーサイドの空中戦はバルザーリが担当する。
本来は、この3バックへの変更に対してレアル・マドリードは柔軟に対応する必要があった。ミドルを増やしてCBを引きずり出すことを狙う、もしくはサイドチェンジで揺さぶりをかけるなど、考えられる選択肢はいくつかあったはずだ。
ただ、レアル・マドリードの中に試合を通して刷り込まれた「サイドが攻め所」という意識が邪魔をしたのだろう。銀河系軍団ですら、後半を通してアッレグリの掌の上で踊らされていたように見えた。下のヒートマップが印象的だが、レアル・マドリードはユベントスの弱点から攻めているようで、その意識を最終盤で逆手に取られてしまった。
(From http://www.whoscored.com/Matches/951413/Live/Europe-UEFA-Champions-League-2014-2015-Real-Madrid-Juventus#heatmaps)
4バックから3バックへの変更で、最も特筆すべきはそのタイミングだろう。レアル・マドリードが焦り、試合を通して比較的プレッシャーが弱かったサイドからの攻撃に終始する。そこで完璧なタイミングでのシステム変更。彼らの希望を冷徹に摘み取ってしまったのである。
マキシミリアーノ・アッレグリは、ただの策士ではない。彼は相手の指揮官が優秀なら優秀なほど、その意図を読み取って進化していく。
迫りくるCLの決勝。最強の3トップを誇るバルセロナと指揮官ルイス・エンリケを前にして、対話する哲学者の更なる進化が見られるだろうか。