アギーレ色、というよりメキシコ色的な部分と、予想される近未来。

CBが高い位置を取り、長いパスを狙っていく場面が多く見られたのは、恐らくザッケローニ時代と最も違うことだろう。CFに皆川を起用し、ロングボールを当てていくようなシステムは、W杯のメキシコに通じるものが無い訳ではない。

特にオランダ戦、「5バックに近い3バック」を採用したファン・ハールに対してメキシコ代表は果敢にも攻撃陣を5人前線に動員。高いキック精度を誇るCBからのシンプルなボールによって、相手のミスを誘うような攻撃を繰り返した。勿論メキシコ代表の特徴はもっと深く幅広いものなので単純に考えすぎることは危険だが、CBからの直接の縦パスを重視するという点では共通してくる部分だろう。一方、W杯でのメキシコ代表は今回のように空中戦が強い選手を使うというよりも、ポジションチェンジと裏への動き出しを使うことでCBからのパスを攻撃に繋げようとした。

恐らく、時間が少ない中で見せたこの特徴こそ、アギーレの戦術的志向の中で核となるものであるはずだ。先にも述べたように、サイドからのカウンターというのも大きな鍵になってくるだろう。そういった意味で起用される可能性が高そうなのは、俊足のワイドアタッカー。宮市、原口、南野、乾などの選手は、ピッチの幅を出していく上で期待されるかもしれない。また、もしもW杯でのメキシコ的に戦っていくのであれば、柿谷は欠かせない。裏で駆け引きをこなせ、落ちてもプレー出来る俊敏なアタッカーを中央で使う選択肢は、W杯でのメキシコ代表でのドス・サントスやチチャリートを思い起こさせる。

まだまだ、アギーレのフットボールの全貌には程遠い。それでも、現在の日本にはアギーレのフットボールを体現出来そうなタイプのプレイヤーが揃いつつあるのはポジティブなポイントだろう。吉田は何度となく鋭い縦パスを供給し、皆川は初出場ながら懸命にポストプレーで存在感を放った。エース岡崎は中央、ワイド両方で持ち味を発揮し、数人の新戦力もフレッシュにアピールしている。順風満帆には行かないかもしれないが、それもフットボール新興国としては仕方がないこと。アギーレと日本代表の歩みをゆっくりと見守ることにしよう。


筆者名:結城 康平

プロフィール:「フットボールの試合を色んな角度から切り取って、様々な形にして組み合わせながら1つの作品にしていくことを目指す。形にこだわらず、わかりやすく、最後まで読んでもらえるような、見てない試合を是非再放送で見たいって思っていただけるような文章が書けるように日々研鑽中」
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