64年ぶり2度目の自国開催となる今大会は、ブラジルにとって『マラカナンの悲劇』へのリベンジと、王国の威信を懸けた優勝が至上命題の大会となる。

しかし、2006年ドイツ大会はロナウド、ロナウジーニョ、カカ、アドリアーノの「カルテット・マジコ」擁する最強タレント軍団で臨むもフランスに敗れベスト8。その反省から組織とフィジカルを重視したドゥンガ体制となり、優勝候補として臨んだ2010年南アフリカ大会も、オウンゴールに相手の踏み付けで退場処分となったフェリペ・メロの失態により準々決勝でオランダに敗戦。2大会続けてベスト8という、王国としては恥ずべき結果が続いていた。

そんななかでブラジルは前回大会後にマノ・メネゼス体制を発足させることになったが、2011年コパ・アメリカでネイマール、ガンソ、パトら若きホープを揃えながらパラグアイに敗れあっさりベスト8で敗退。メネゼス監督はロンドン五輪代表も兼任していたが、ブラジルが国際タイトルで唯一獲得できておらず、悲願としていた金メダルも本大会決勝でメキシコに敗れて逃してしまう。立て続けの失敗によりメネゼス監督はワールドカップまで約1年半となる2012年11月に解任されることになった。

そして、本番までの僅かな時間のなかでチームを再建し母国を優勝に導くという最も困難で重圧のかかる任務を引き受けたのは2002年の日韓大会でブラジルに5度目の優勝をもたらした重鎮、フェリポンことルイス・フェリペ・スコラーリだった。