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ワールドカップアジア三次予選で韓国を破り、最終予選進出を決めたレバノン。またグループAではヨルダンが首位でグループ突破を決める鮮烈な活躍を見せた。

一方、フランク・ライカールト監督を招聘したサウジアラビアは苦戦し、ポール・ル・グエンを指揮官に据えたオマーンは敗退が決定。7月にピーター・テイラー監督が就任したバーレーンも結果を出すことが出来なかった。

この運命を分けた原因はいったい何なのか。レバノンの新聞デイリースター紙の記者フィツロイ・モリッシーがコラムを書いており、それを紹介したい。

「先月韓国に勝利した後、コメンテーターや評論家はすぐさまテオ・ベッカー(レバノン代表監督)を称えた。新聞、ツイッターでは、ドイツ人コーチを賞賛する多くの言葉が飛び交った。中東で長く指揮を執っている彼の成功は、今回の予選で起こった多くの現象の中の一つだった。

アジア予選では多くの中東諸国が大物外国人コーチを招聘。サウジアラビアはかつてバルセロナの監督だったフランク・ライカールトを。イランはアレックス・ファーガソンの片腕として有名だったカルロス・ケイロスを。イラクはジーコを監督に据え、オマーンはポール・ル・グエン。給料が高い有名な外国人コーチを連れてくることは、中東では珍しくないことだ。古くは1977年、UAEが元イングランド代表のドン・レヴィを買ってからだ。

多くの現金が溢れており、しかも成功に飢えている。サウジアラビアや湾岸諸国の多くは、生え抜きのコーチを捨て、魅力的なオプションを選択する。三次予選の中東9カ国の中で唯一のアラブ人コーチは、ヨルダン代表チームで指揮を執っているイラク人監督アドナン・ハマドである。

UAEはまさに典型的だ。9月にベイルートでレバノンに敗れ、あっさりとスレチュコ・カタネッツは協会によって解任された。五輪代表の予選の苦戦を見て、UAE人コーチのマフディ・アリは批判されており、プレスはすぐに『ル・グエンやライカールトに匹敵する監督を』と書き出した。MBCのフットボールアナリスト、ケファフ・アル・カービの言説はまさにそうだ。

『我々はアーセン・ヴェンゲルのようなビッグブランドを持つコーチが必要だ。我々は多額のお金を支払う必要がある。ケチケチしている場合ではない。資金をもっと投入すべきだ。0-0の試合を見るのは終わりにしなければ(UAE五輪代表はまだ予選で1点も取っていない)。マフディ・アリは良い仕事をしているが、外国人コーチが必要なのだ』

しかし、外国人の招聘が確実に国際的成功に繋がるわけではないのだ。それはUAEに限ったことではない。

最近のUAEの歴史が、ピッチの上で成功するための基礎がないことを証明している。1977年からのべ23人の外国人コーチを招聘し、多額の現金を支払ったが、ワールドカップに出場したのは1990年、カルロス・アルベルト・パヘイラ監督時代の1度のみだ。

最近では、さらに唯一のアラブ人コーチであるアドナン・ハマドの成功も注目に値する。彼の最初の成功はアジアカップでの決勝トーナメント進出。さらにワールドカップアジア予選でも最終ラウンドの進出。ヨルダンサッカーの歴史上初の快挙を成し遂げた。

そして、欧州では全く無名であり、中東で長く指揮を執ってきたドイツ人コーチ、テオ・ベッカーがレバノンを最終予選に導いている。

非常に対照的な出来事だと言える。

ライカールト監督(サウジアラビア)は決勝トーナメントには進出したが、インドネシア、タイ、オマーンと引き分け、批判を浴びている。

バーレーンではピーター・テイラー監督が就任したが、イランに6-0と大敗するなど結果を残せず。

オマーンを率いたポール・ル・グエン監督も、先日ホームでオーストラリアに勝利するアップセットを成し遂げながら、最終予選進出を逃したことで国民からの支持を得られていない。

多くの給料を支払っているライカールトやル・グエンなどに対して、協会の忍耐は不足している。

現在中東諸国で働くコーチのリストを見れば、“雇用が保障されている”監督が欠如していることがわかる。上述の9カ国のうち、ヨルダンのアドナン・ハマド、クウェートのトゥフェグジッチ以外の7人は全て今年雇用されたコーチだ。ほとんどがヨーロッパのシーズンが終わった後に仕事を失っていた人間である。

一般的にいえば、多くの外国人コーチが失敗する理由は2つあるのではないかと思う。一つは無理な期待値の高さ。もう一つは協会の忍耐不足だ。会長や王族が強大な力を発揮するほとんどの中東諸国において、外国人監督は新しいサッカーを構築する時間が許されない。

このような短期的視点の経営が多い中において、違うスタイルで望んでいるクウェートの成長は偶然ではないのではないか。ファン、協会、選手が一体となって安定性、一貫性を持った強化を行い、2009年から指揮するゴラン・トゥフェグジッチによって成功がもたらされている。

それ以前に、地域の中でほとんどが外国人監督という政策には、もっと疑問視がなされるべきである。札束をいくら詰めたところで、文化的差異の穴をすぐに埋めることは出来ないのだ。フランク・ライカールトがGoal.comに語った言葉がそれを表している。

『ようやく少しサウジアラビアのサッカーが分かってきた。ピッチ内外両方において、多くの仕事が必要とされている』

7月にオマーンの監督に就任したポール・ル・グエンも、FIFAのインタビューにおいて新たな環境に慣れる必要があるということを認めている。

『常に文化的な差異は立ちはだかっている。重要なことは、モハンナ・サイードのように私を助けてくれる方々の話を聞くことだ。ヨーロッパと同じようには行かないから、サポートを必要としている』

このような状況の中で、10年に渡って中東で活躍してきたテオ・ベッカーの成功は驚くべきではないのかもしれない。ドイツでは彼は“ハーフ・レバネーゼ”と呼ばれ、アラブでは“シフル・アル・アラブ”という渾名が付いている。

レバノンとの強い結びつきがある彼が、良い選手を抱えていることは自然なことだ。いくらかの人はそう言うかもしれないが、決して欧州に背景があるために収めた成功ではない。一方“世界の”ライカールトはそれを持っていないし、慣れるまでに多くの時間も必要だ。

ベッカーがレバノンで、そしてアドナン・ハマドがヨルダンで成功したことで、中東諸国の雇用政策を再評価しなければならない機会がやってきている。自国の監督、あるいは自国と強い結びつきを持つ監督は、国際的なビッグネームではなくとも、よりよい結果を残すかもしれない。

それでも外国人がアラブ人に鞭打つことが必要だというのなら、それは帝国主義の眼鏡を通しての視点であり、罪である。中東諸国が成功を収めるためには外国人に頼らなければならない…そんな理由など、どこにもないのだ」

(筆:Qoly編集部 K)

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