2年前はベンチから眺めた決勝戦
この日東洋大を最も苦しめた選手は守護神だった。GK宮本流維(4年、名古屋グランパスU-18)は優れた反応を駆使して何度もビッグセーブを披露。まさに赤い壁としてチームを窮地(きゅうち)から救い続けた。
そんな宮本だが、2年前はベンチから決勝戦を眺めていた。あのときの歯がゆさをバネにここまでたどり着いたからこそ、この日優勝杯を掲げたかった。
「総理大臣杯の負けだけじゃなく、今年を除いた3年間本当に苦しい思いをしてきて、やっと自分がチームを勝たせるチャンスがあって…。その悔しさをバネにしてやってきたんですけど、結果として最後に負けてしまった…。自分の取り組みにまだまだ甘さや弱さがあったかなと思います」と唇を噛んだ。
2023年大会に続いて準Vに終わったが、既に次を見据えてイレブン各々は自分たちにベクトルを向けている。今季スローガンに『凡事徹底』を掲げるチームは、日々の練習から勝てなかった要因や課題を見つめ直す。
「まず決勝に勝てなかったことは何か要因があるわけで、自分たちの練習の中でしか見つけることができないです。詰められることができるのは練習だと思います。あとは、今年は『凡事徹底』を掲げていて、ピッチ以外の部分で荷物を並べること、あいさつと、本当に当たり前のことを当たり前にやります。幹部の人たちが中心に当たり前のことを投げかけているので、人として当たり前のところから立ち返って、一つ、一つ積み上げていければいいかなと思います」
2015年に夏冬全国制覇を達成した名門はタイトルに飢えている。10年前に果たした日本一を何としてでも冬で成し遂げたい。
「まずはリーグ戦があるので、リーグ戦に重きを置いて、そこで関西の大学としてまた日本一を取れるだけの土台が作れればいいと思います」と意気込んだ。
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もうシルバーメダルはいらない。冬のインカレに向けて西の雄は、凡事を徹底しながら10年ぶりの頂を勝ち取ってみせる。
(取材・文 宇田春一)