絶対に勝たなければいけない一戦は続く
この日、センターバックで出場した井上は大卒ルーキーらしからぬ堂々としたプレーで、ディフェンス陣を統率。5バックで守りを固める鳥栖の背番号13は、身振り手振りを交えながら味方に声を出し続けた。
「相手のホームで、スタジアムの雰囲気もすごく良かった。そんな中で相手のペースになるかもしれないというのは想定済みでした」と落ち着いたパフォーマンスで千葉の攻撃をシャットアウトした。
鳥栖は前半31分にFW山田寛人(ひろと)が右からのクロスボールに合わせて先制弾を奪うと、その後もカウンターを中心に攻めた。後半24分には相手のオウンゴールで突き放し、試合巧者ぶりを発揮した。
なんとかして追いつきたい千葉は、クロスボールから得点を狙うも牙城を崩せず。
井上は「相手はサイドに特徴のある選手がいるので、いいクロスが上がってくるとは分かっていましたし、そこはうまくセンターバックやウィングバックとコミュニケーションを取っていました。ボールが入ってきても、最後にゴールを割らせなければいいと意識していました」と、的確な判断で失点を阻止した。
後半38分には千葉の岩井が左サイドバックで途中出場。ホームチームは攻撃のギアを上げたが、得点を奪えなかった。
強烈なタックルとカバーリングでボールを奪い、カウンターにつなげた鳥栖のルーキーは同期の前で成長した姿を見せつけた。
「『ケガから学ぶことはある』と言う人もいますが、僕は絶対にそう思わない。まずはピッチで自分の価値を証明するのがサッカー選手だと思うので、ここまでケガをせずに戦えているのは、すごく自信になっています」
試合はそのまま2-0で終了し、鳥栖は2連勝を飾り、暫定7位に浮上。リーグ戦3試合連続のクリーンシートを達成した。
アウェイに駆けつけたサポーターと喜びを分かち合った井上は「自分たちがJ1昇格と優勝するためにはこの6ポイントゲームを、絶対に勝たなければいけないと分かっていました。うまく(千葉の攻撃を)耐えてゼロで抑えられたことは、チームとしても個人としても自信になったゲームでした」と笑みを浮かべた。
次節は今月12日午後7時からホームの駅前不動産スタジアムで大分と激突。九州ダービーに勝利すれば、他会場の結果次第では3位に躍り出る。
ライバルたちには負けられない。
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井上は「今シーズンはまだ3連勝できていない中で、次はホームでダービーです。ここで勝利すれば、昇格と優勝が見えてくると思っているので、まずは休んで、この1週間いい準備をして臨みたいです」と、同期の宮川が所属する大分との大一番に勝利してみせる。
(取材・文 浅野凜太郎、写真 縄手猟)