韓国での心情の変化と自身初タイトル
邦本は2018年1月に、約7カ月間の無所属期間を経て、前年にKリーグ2を制して1部昇格を果たした慶南へ移籍した。
昇格初年度のシーズンとなった韓国南部の地方クラブは、邦本やブラジル人FWマルコン(現トルコ2部コジャエリスポル)ら強力な外国籍助っ人がチームを牽引し、Kリーグ1で旋風を巻き起こした。
慶南は惜しくも最終順位2位でリーグ戦を終える結果となったが、選手層で劣る昇格チームがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を勝ち取った大躍進は、2015-16シーズンにイングランド・プレミアリーグを制した『ミラクル・レスター』を彷彿とさせた。
邦本の慶南での活躍は、かつて日本で『天才』と呼ばれたポテンシャルを再び証明し、2020シーズンに韓国の絶対王者全北現代(チョンブクヒョンデ)へステップアップを果たした。
ーー邦本選手の評価を再び高める意味では、慶南での2年間は重要な期間になったと感じました。邦本選手の中でどのような変化がありましたか。
「韓国に行くと『助っ人外国人』なので、結果を出さないといけない。日本にいるときも結果を出さないといけないという気持ちでいましたが、ほかの国へ行くと『外国人』として呼ばれているので『結果を出さないと自分の居場所がなくなる』と思いました。1年じゃなくて『1試合、1試合が勝負』と思ってやっていたから、自分のプレーもうまくいきました。気持ちのちょっとした変化かもしれないですけど、その変化から少しずつサッカー選手として成長できたと思います」
ーー浦和アカデミーのときに『楽しくサッカーをしたい』という話がありました。自分の中で折り合いをつけたなど、メンタルの変化はありましたか。
「もちろん『仕事として』というのは(前提に)ありますが、自分にはプレッシャーのほうが合っていて、そっちのほうが自分は奮い立つというか。『結果を残さないと駄目な世界』と思って(サッカーを)やると毎週調子が良かった。考え方も前向きになりました。もちろんキツいときもありましたけど、そのプレッシャーも楽しくやれていたので、自分にとってすごく良かったと思います」
ーー全北では、リーグ優勝を成し遂げました。それまでうまくいかない時期もあった中での自身初タイトルはどのような気持ちでしたか。
「僕はめちゃくちゃ嬉しかったんですけど、その当時の全北は『優勝しないといけない』『優勝して当たり前』という感じでした。そのチームでプレーするプレッシャーがありましたけど、優勝が決まった瞬間はいままで抱えていたプレッシャーが一気になくなりました。初めてタイトルを獲ったので、サッカー人生の中で一番うれしかったですね」
かつて『楽しくサッカーができないのなら』とプロの道を諦めかけた青年は、異国での様々な経験を経て『プレッシャーを楽しむ』という新たな境地を開いた。
【インタビュー】中国帰化否定…邦本宣裕が数々の“悪童報道”の真相を激白「事実を載せてほしい」
後編では、ポルトガル、マレーシアでの不遇の日々や、中国での好調の要因、いままで邦本が衝撃を受けた選手について聞いた。