覚悟が違う選手たち
昨季はJ1昇格プレーオフをかけた最終節山形戦で0-4と大敗し、目前でJ1復帰を逃してしまった。サポーターたちは戻るべき場所に戻れなかったやるせなさ、悔しさは筆舌し難いものがある。17年の間、本来いるべき場所の扉は固く閉ざされている。
何度も、何度もその扉をこじ開ける寸前までいったが、あと一歩のところで跳ね返されてきた。イビチャ・オシム監督が見せた鮮やかなサッカー、過酷な戦いを乗り越えて2度のカップ戦王者に輝いた偉業、血湧き肉躍るほどの華やかさと激しさがあった戻るべきあの場所は近いようで果てしなく遠かった。
ジェフがJ1にいる時代を知らないサポーターも増えつつあり、J1復帰を夢見ながらも天国へ渡ったファンもいる。その悔しさは形容し難いものだ。ただJ1時代を知らない選手たちは昨季の敗戦で目の色を変えて開幕戦を戦った。
これまでとは覚悟が違う―。昨季最終節の敗戦のような屈辱を二度と繰り返さない。髙橋は「まず勝負の試合で勝てるチームじゃなきゃいけない。僕らは周りから大事なときに勝てないチームだとよく言われています。それを払拭したいというのがまず一番にあります。ディフェンスの選手なので、守備で失点を減らすことができれば勝ち、引き分けにできる試合が多くあると思うから、そこが一番の今年のテーマ」と言葉に力を込めていた。
これまで勝負の試合で勝ち切れなかった試合を勝ち切る。泥臭く守り、球際や走りで競り勝ち、いい守備からいい攻撃へつなげるサッカーは今季始まってまだ2試合であるが、選手たちはピッチで熱く体現している。
今季エースナンバーである背番号10を選んだ横山も「いままでジェフで10番を背負ってきた人たちは、それぞれの10番らしさを表現していたと思います。辛抱強さとか我慢強さ、はい上がる力みたいなものは、ジェフとして表現しないといけない。 それを率先して表現する選手が10番だと思うので、そこを表現していきたいという気持ちですね」と自身の良さを出しながらも、これまで歴代のジェフの選手たちが見せてきた諦めない姿勢を示そうとしている。
背番号10、髙橋が粘り勝った開幕戦に続き、第2節富山戦は相手を圧倒する形で10季ぶりの開幕連勝を果たした。昨年6月に左アキレス腱断裂の大ケガを負った鈴木主将は、8カ月にも及ぶリハビリ生活を乗り越え、先発した第2節の完封勝利に大きく貢献した。
浅野凜太郎記者が背番号13を取材した際に覚悟の違いを見せつけられたという。
鈴木は「ケガしている間、ずっとサポーターの目線で試合を観られました。自分はアウェイにも帯同していて、移動で隣の席にサポーターがいたり、同じホテルに泊まったり、同じ風呂に入っていたんです。
そういうときに、『(復帰を)待っています』と直接声を掛けてもらっていました。お金を払ってアウェイまで来てくれる人の気持ちとか、サポーターがどれだけ熱い気持ちで応援しているのか近くで見てきて分かったので、すごく勇気をもらえた。だからこそ、『そこ(ピッチ)に絶対戻るんだ』と思ってやってきましたし、みんなからの『復帰を待っているよ』という声でリハビリを頑張れました」と、サポーターのために奮闘した。
言葉だけじゃない。覚悟、決意がプレーに表れているからこそ、泥臭く、激しく戦う原動力になっているのだろう。補強もほぼ完璧な形で用意ができた今季だからこそ、これまでとは違い結果を追い求めなければならない。
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機は熟した。17季ぶりのJ1復帰を果たさなければいけない。これまで悔し涙を流してきたサポーターが流す落涙をうれし涙へと変えるために、まずは難敵山形を粉砕して史上初の開幕3連勝を飾る。