サイドハーフとして「いいところを伸ばしていけばいい」
「いくつかオファーがありましたが、慶行さんが足を運んでくれて熱い想いを語ってくれました。そこで1番心が動いたので、ジェフに来ました」
1月6日に千葉へ期限付き移籍で加入すると発表された。長い間J2で苦しむ古豪をトップディビジョンへ押し上げるための即戦力として、チームに迎え入れられた。
「自分を評価してくれるところで、活躍したい」と、気持ちを新たにして迎えた2024年だった。しかしリーグ戦の途中に行われたJ1柏レイソルとの練習試合で、岡庭は慣れ親しんだサイドバックではなく、監督からサイドハーフを任された。
「サイドバックとしてジェフに来た中で、サイドハーフにコンバート。最初のころは両方のポジションをやることもあって難しく考えてしまいました。気持ちが整理できていない時期もありました」と吐露した。
J2開幕前戦から第6節までのうち、5試合はメンバー外。その後も途中出場が続き、なかなか新しいポジションでチャンスをつかめなかった。
岡庭は悔しさをバネに練習に打ち込んだ。ミニゲームでは積極的に仕掛けるプレーを心がけて、ゴール前で驚異となるプレーを連発。いざ試合に出場すれば、限られた出番の中でもクロスを量産して攻撃を活性化させた。
するとJ2第14節の横浜FC戦で今季初の先発出場を勝ち取り、チームの勝利に貢献。続くJ2ヴァンフォーレ甲府戦ではクロスからアシストを記録した。
「サイドハーフとして大切にしなければいけないことを、自分の中で区別できた。それが落ち着いてから自分自身も結果が出たり、チームに大きく貢献できる場面が増えました」
成長の兆しを見せたハードワーカーは、サイドハーフをモノにした。出場すればクロスからチャンスを演出し、守備でも二度追い、三度追いを繰り返した。また競争が激しい千葉の中でも、複数ポジションでプレーできる新たな武器が強みとなり、時にはクローザーとしてチームを支えた。
「いいところをどんどん伸ばしていけばいいと気づきました。(長友と)同じところで勝負しなくても、自分自身という武器でどう戦うのか。(サイドバックでのプレーは)ブラさないまま、(サイドハーフを)自分の中で受け入れました」
これまで積み上げてきたサイドバックとしてのアイデンティティを生かしながら、サイドハーフとしての新境地を開いた。いつしか「自分は前線の選手だ」という自覚が強くなり、ゴールへの執着心が増していった努力家は、ピッチ内外で確かな手ごたえを感じ始めていた。
ただその一方では「いつでもスタメンから外れる」という危機感を持ち続けていた岡庭。し烈なスタメン争いの中で、後半戦は悔しい思いを味わった。
第34節J2ザスパ群馬戦でクローザーとして出場すると、カウンターの場面で手をかけられてファウルを受けた。その直後、得点のチャンスを奪われた悔しさから、やり場のない怒りを爆発させた。
当時の心境について岡庭は「サッカー選手なので…」と消化不良を吐露。第32節から最後の第38節までは、スタメン出場の機会に恵まれなかったサイドハーフは、目に見える結果に飢えていた。
「最後の5節くらいは、あまりチームに貢献できなかった。もっと、もっと突き詰めないといけないところが出たシーズンだと思います」