J2ジェフユナイテッド千葉のDF岡庭愁人(しゅうと)は、J2最終節モンテディオ山形戦について多くを語らなかった。今季J1・FC東京から期限付き移籍で加入し、公式戦34試合出場3得点5アシストを記録しながらもベンチで最終節を見届けた背番号19。慣れ親しんだクラブから挑戦の場を移した岡庭が、今季を振り返った。
(取材・文・写真 浅野凜太郎)
山形戦について話すことは「難しい」
千葉は2024シーズンを7位で終えて、16季ぶりのJ1復帰を逃した。最終節山形戦はJ1昇格プレーオフ(PO)進出の可能性がある試合だったが、立ち上がり早々に失点を許すと、そのまま0-4で敗戦。イレブンは苦悶(くもん)の表情を浮かべながら、ピッチを去った。
完敗だった山形戦について「(ピッチの)中でやっている選手にしか分からないことがあるので、(意見を言うことは)難しいです」と口にした岡庭は、最終節で控えメンバーに入ったが、最後までベンチから試合を見届けた。
もちろん試合に出たかったが、自身のモットーである「チームのために自分ができること」を最後までやり続けた。試合中はベンチから声を出し、交代で下がった選手にはいち早く労いの言葉をかけた。思えば、岡庭は千葉加入後から最終節まで変わらずに、その姿勢を貫いていた。
チームがトレーニングの最後にシャトルランを行っていた日のことだ。小林慶行(よしゆき)監督が根付かせた強度の高い練習メニューに「きつい」と声をあげる選手もいた中、背番号19は仲間たちに「やるよ、やるよ!」と鼓舞していた。
途中出場となった第32節のJ2レノファ山口戦では試合終盤に背番号19がPKを獲得したが、蹴りたい気持ちを抑えてFW小森飛絢(ひいろ)にキッカーを譲った。キャリア初のハットトリックが懸かったエースとチームのためを思った行動をとった。
高校年代はFC東京U-18で育ち、大学サッカー界屈指の名門である明治大へ進学した岡庭は、右サイドバックとして持ち前の運動量と正確なクロスを磨きFC東京でプロ内定を勝ち取った。
「オカニー」のニックネームで親しまれ、サポーターからも愛される25歳のキャリアとプレースタイル、そしてピッチ内外での振る舞いは、FC東京と明治大の先輩である日本代表DF長友佑都と重なる部分がある。
岡庭は2021年に共闘したサムライブルーのDFについて「(FC東京に)入団した当初は、(長友のことを)意識していました。早く(長友の)ベースに乗っからないといけないと考えていた」と模範にしていた。
サイドバックというポジションは25歳にとって「大事にしてきたポジション」だ。憧れの存在に追いつこうと、昨季は期限付き移籍先の当時J2大宮アルディージャで奮闘。右サイドバックを主軸として、リーグ戦42試合に出場するなど、充実のシーズンを過ごした。
そして今季、若きサイドバックに転機が訪れた。