神戸のレガシー

イニエスタらスター選手たちの加入により、日本人選手たちのサッカーに対する思考、判断、基礎技術に多大な影響を与えたことは、様々な媒体で選手たちが証言している。正確かつ素早い判断、早いゲーム展開での止める、蹴るなど、路線変更後のカウンターサッカーにおいてこの期間に培った要素が随所で生きた。

神戸のカウンターは、敵陣の綻びを見抜いて攻守を切り替える素早い正確な判断や、ターゲットからズレないパス、スピードを殺さずに次のプレーへつなげるファーストタッチなどが必要不可欠となる。これらの要素はパスを基調としたサッカーを志向した上で、スター選手たちとの切磋琢磨(せっさたくま)したからこそ、この戦術に必要とされる優れた技術と判断が向上したと見受けられる。

パスサッカーからカウンターサッカーへの転換は一見難しく見えるが、もともとアスリート能力が高い選手たちに前述した判断と技術がそなわったことで、ただのカウンター戦術ではなく、より進化したカウンター戦術に昇華したと思える。

イニエスタ構想外などが注目を受ける形で、技術を基調とする「バルサ化」といわれる路線は失敗と各メディア、有識者が蔑んだが、レガシーという形で選手たちに脈々と引き継がれているため、「バルサ化」といわれる路線はリーグタイトルを勝ち取る上で必要な経過だったと思える。

「バルサ化」という言葉が独り歩きするように、パスを徹底的につなぐサッカーといった陳腐なイメージや「黄金期を築いたバルセロナを猿真似する」といったような低次元な発想の上で志向されていたら、このレガシーは定着しなかっただろう。レガシーという形でバトンをつなげるように各指揮官、スタッフが試行錯誤を繰り返しながらチームに根付かせたことで強く、上手く、戦える神戸が完成したと推察できる。