攻撃時に<4-3-3>へ変化する意図は?

終盤戦で一気に勝ち点を積み重ねているチームを支えているのが、高い技術を誇る田口泰士と見木友哉のダブルボランチだ。

9月度のJ2月間MVPに輝いた田口は、正確な長短のパスでゲームメイクする司令塔。上下左右にボールを散らして攻撃のタクトを振る役割を担い、不動の存在として君臨している。その右足はプレースキックでも生かされており、第37節・ファジアーノ岡山戦では、コーナーキックからメンデスの先制点をアシストした。

田口とコンビを組むのが、攻撃センスに長ける見木だ。これまで2列目のアタッカーで起用されることが多かった見木は、パスやドリブルなど攻撃性能全般に優れる万能型。2020年の加入以降、チームの軸として活躍してきた。

だが、プロ4年目を迎えた今シーズンは主にボランチでプレー。攻撃時は左インサイドハーフへポジションを上げて、積極的に前線へ飛び出していく。

前項で触れた通り、今季の千葉は<4-2-3-1>が基本システム(※守備時の布陣)だが、攻撃時は<4-3-3>へ変化する。田口がアンカー、見木が左インサイドハーフ(以下IH)、トップ下の風間宏矢が右IHへそれぞれ移動し、中盤が逆三角形になるのだ。(下図参照)

攻撃時に<4-3-3>へ変化する意図は何か。まず考えられるのは、「パスコースおよび攻撃の選択肢増加」だ。

構造上トライアングルを多く形成できる<4-3-3>は、パスを回しやすく、かつ幅を取りやすいシステムの代表格。<4-3-3>では攻守の軸となるアンカーの働きが肝となるが、正確な長短のパスを武器とする田口にとって、アンカーはうってつけのポジションである。

田口が前向きでボールを持った時、「IH化」する風間と見木が背番号4のパスコースを前方で確保。田口は一列前の風間または見木にボールを預ける形を第一の選択肢としつつ、一気のフィードで3トップを狙うorオーバーラップするサイドバック(以下SB)に良い形でパスを供給しようと目論む。

このように、アンカーの田口には常に複数の選択肢が用意されており、最善のチョイスを迅速に判断できる田口にとって、極めて理想的な状況だと言える。攻撃時に<4-3-3>へ変化する形は“田口システム”とも形容できる。

次に考えられるのは、「攻撃に厚みをもたらす」という点だ。これは主に、「IH化」する見木と攻撃参加が光る両SBを生かす目的がある。

前述した通り、見木は2列目を主戦場としてきたプレーヤーである。その背番号10を敢えてダブルボランチの一角に配し、攻撃時に「IH化」させるのは、後方からの攻め上がりが相手守備陣にとって捕まえにくいからだ。