特別指定選手の出場数にも影響が

2019年シーズンに2桁数の試合に出場した選手は、松尾とJ1北海道コンサドーレ札幌でリーグ戦6試合、ルヴァン杯8試合1得点で公式戦計14試合プレーした日本大FW金子拓郎(現クロアチア1部ディナモ・ザグレブ)のみであり、同制度が始まった1998年から2018年まで2桁数の公式戦に出場した選手は14人しかいなかった。

ただ前述したようにJリーグの舞台で才能を開花した松尾は、国内外から注目される存在になった。J1の強豪クラブ、欧州の複数クラブが松尾の動向を追っていたという。そのため、松尾の活躍から特指は優秀な選手の育成する考えから、戦力として見る考え方へとシフトしていった。

2020年には立命館大からJ1サンフレッチェ広島の特指の承認を受けたMF藤井智也(現J1鹿島アントラーズ)はJ1で15試合出場、ルヴァン杯2試合出場した。興国高のFW杉浦力斗はJ2ツエーゲン金沢でリーグ戦20試合出場(高校生の特指では史上最多出場記録)など、2桁台の試合に出場する選手が1シーズンだけで6人に激増した。

広島で活躍した藤井智也

2020年シーズンから2022年シーズンの3季で2桁以上の公式戦出場選手は11人となり、松尾の活躍以前より戦力として特指が計算されるようになった。

余談になるが、松尾の出身校の仙台大はJ3カマタマーレ讃岐MF鯰田太陽(特指時代10試合出場)、J3福島ユナイテッドFCのMF粟野健翔(特指時代10試合出場)とJリーグクラブへの選手貸出に大きく協力している。

年俸が発生しないコストパフォーマンス、早い段階から期待の若手大卒選手をプロの舞台に慣れさせることができるため、Jリーグクラブは積極的に同制度を活用する傾向となった。