組織的な広島と札幌で許容された個人技
ただし、「未完の大器」感が強かったのも事実で、2017年はチーム最多の10ゴールを挙げながらも、チームが残留争いを強いられた要因でもある守備面の脆さや決定力の低さ(シュート決定率8.5%)を露呈。2017年限りで退団するに至った。
決して守備意識の低い選手ではなかったが、彼のドリブル突破からのボールロストが多く、それが失点に繋がっているのは明白だった。特に彼の場合はシャドーの位置からドリブルを仕掛けるため、ボールを失う位置がサイドではなくリスクの高い中央付近になるため、相手のカウンターからピンチを招くことが頻発してしまったのだ。
A・ロペスは、「ボールを走らせろ、ボールは疲れない」とは真逆のプレーを続けていた。ドリブルで2人交わせば、3人目が来る頃には周囲が数的優位を確保できている。しかし、彼はパスを選択すればアシストが付く場面でも3人目を交わしに行くか、自らが無理な体勢から強引なシュートを狙って好機を逸する場面が多過ぎた。
また、これは競技経験者“あるある”かもしれないが、ダッシュを続けながらジグザグにボールを運び、スピードの緩急を必要とするドリブルは体力の消耗が激しい。ドリブルでボールを奪われた瞬間は体のバランスを崩しているため、守備への切り替えも遅くなる。
ただし、彼はパスサッカーと独自の組織的戦術「ミシャ式」が浸透した広島、そして2019年からの2年半はその本家“ミシャ”こと、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が指揮を執る、北海道コンサドーレ札幌でも、それを“矯正”されず、貫いて来たのだから恐れ入る。
彼は生粋のドリブラーでもウイングでもない。彼のドリブルは自らが得点を奪うための手段に過ぎない。だからこそ、迫力を伴って相手に危険を感じさせる。広島と札幌でも重用された理由はそれだろう。