ハンのイタリアにおける有望なキャリアは断たれたが、アル・ドゥハイルでは歓迎された。シーズン途中に加入すると10試合で3ゴールを決め、リーグ優勝に貢献。

ハンとアル・ドゥハイルは5年で460万ドル(6.6億円)の契約を結んでおり、国連安保理の報告書によれば、2020年2月~4月には29.62万ドル(4272万円)の報酬を得ていた。

彼が国外で働く他の北朝鮮人と同じように母国に送金していたかは疑問が残る。国連の文書によれば、彼は「いかなる場合も北朝鮮に送金しない」とのカタール銀行の誓約書に署名していた。

ハンが金政権に送金していたかは不明だが、北朝鮮の国外労働者は本国政府への送金を強制されていると広く報じられてきた。

国連安保理は2020年3月に発表した報告書で海外で収入を得ている可能性がある北朝鮮人を調査しており、スポーツ選手などのスペシャリストもそこに含まれている。

ハンがアル・ドゥハイルで最後にプレーしたのは2020年8月のこと。サッカーファンがプロとしての彼のプレーを見るのはこれが最後になるだろう。

新シーズンが始まった翌月になると彼は消えた。スタメンにもベンチにもおらず、移籍のニュースもなかった。

2021年3月に発表された国連安保理の最終報告書で、ハンとアル・ドゥハイルとの契約は同年初頭に解除され、彼がカタールから国外追放されていたことが判明。アル・ドゥハイルとカタール当局にコメントを求めたが、即座の回答はなかった。

2021年、北朝鮮が新型コロナ対策のために国境を封鎖して人流や物流を制限した結果、ハンは立ち往生することに。国連安保理の最終報告書によると、彼は2021年1月26日にドーハ発のカタール航空便に搭乗し国外退去になっている。

だが、関係者によれば、帰国できなかった彼はローマに向かうことになったという。2016~2018年まで北朝鮮代表監督を務めたビョルン・アナセン氏は、「彼のマネージメントがイタリアに連れ帰ったことは知っている。彼はまだそこにいるだろうが、もうサッカーはプレーできない…。プレーも成長もできないのは非常に不運なことだった」と話している。FIFAとイタリア外務省に問い合わせたが、返答はまだない。

別の関係者によると、2021年時点でハンはどこかの北朝鮮大使館に滞在しながら、平壌への帰国便再開を待っていたという。帰国できない国民たちを受け入れている北朝鮮大使館もあるようで、関係者は「宿泊棟に数十人以上の北朝鮮国民を長期的に“トランジット”させているところもある」とも話している。

ハンがどのような状況にあるのかは不明だ。

カリアリU-19の元監督は「あのレベルを取り戻すのは簡単ではないだろうが、不可能ではない。もし復帰のチャンスが与えられれば、すごくいいモチベーションになる。いいキャリアといいお金を得られただろうから勿体ない」、アナセン氏は「彼はほぼ2年間プレーしていない。どこかは分からないが小さなチームで練習だけしていると思う。ただ、プレーはしていないので、クオリティの多くは失われた。彼がサッカーをやめなければいけなかったことは非常に残念だ。すごい才能を持っていた」と悲しんでいる。

CNNでは、ハンのビッグクラブでプレーするという夢が生い立ちのせいで消えてしまったことは2人の監督にとって最大の恥辱だろうとしている。

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韓国政府関係者によると、北朝鮮は国連から制裁処分を受けているにもかかわらず、10万人以上の北朝鮮労働者が中国やロシアなど40か国に滞在しており、年間2億~3億ドル(288~432億円)の外貨を稼いでいるという。

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